わが社の成長率は何%だ?-CAGR(年平均成長率)はどう計る-

2024年9月13日

質問

雑貨類の小売業を営む「ミロク雑貨販売」の売上の推移は、次のとおりです。このデータに基づくと、同社の5年間のCAGR (Compound Annual Growth Rate、年平均成長率)は何%でしょうか?

20X1年 20X2年 20X3年 20X4年 20X5年
売上(百万円) 500 550 700 790 950
前年比成長率 10.0% 27.3% 12.9% 20.3%

パターン1

毎年の前年比成長率の合計をその年数で割って計算した17.6%(※1)

(※1) 前年比成長率の合計(10.0%+27.3%+12.9%+20.3%)÷4年≒17.6%

パターン2

4年間通しての成長率をその年数で割って計算した22.5% (※2)

(※2)(950-500)÷500=90%
 90%÷4年=22.5%

パターン3

毎年、一定の率で成長していく値となる17.4% (※3)

(※3) 500×(1+17.4%)4
=950

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

雑貨
分析

正確なCAGR(年平均成長率)を把握して、事業計画を作成

「ミロク雑貨販売」の社長が将来の事業計画を考えています。その際の参考データとして、最近知った「CAGR」(年平均成長率)の正しい計算も役立ちました。しかし、3か月前の社長は、CAGR(年平均成長率)の計算方法がよく分かっていませんでした。

3か月前の様子を見てみましょう。

3か月前―わが社のCAGR(年平均成長率)は何%だ?


社長

将来の事業計画を考えている。出発点は売上の将来予測だが、これまでの成長率の実績値も考慮し、今後の経営環境を考えながら事業計画を作っていこうか。ちなみにここ5年間の売上高の推移はどうなっていたかな

次のとおりです


財務部長

そう言うと財務部長は次の表を見せました。

【図表】5年間の売上高の推移

20X1年 20X2年 20X3年 20X4年 20X5年
売上(百万円) 500 550 700 790 950
前年比成長率 10.0% 27.3% 12.9% 20.3%


社長

20X1年の500から20X5年には950まで成長できたわけだな。倍増とまではいかなかったが90%も成長できたってことか! ところでこの期間の平均の成長率ってどうやって計算するものなんだ?

ミロク雑貨販売の社長は「成長率」の計算方法が気になったようです。どうやら成長率の計算にはいろいろな方法があるようではありますが、その中に「CAGR(年平均成長率)」と言うものがあるようなのです。これは一体どのように計算するのでしょうか。

質問

雑貨類の小売業を営む「ミロク雑貨販売」の売上の推移は、次のとおりです。このデータに基づくと、同社の5年間のCAGR (Compound Annual Growth Rate、年平均成長率)は何%でしょうか?

20X1年 20X2年 20X3年 20X4年 20X5年
売上(百万円) 500 550 700 790 950
前年比成長率 10.0% 27.3% 12.9% 20.3%

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パターン1

毎年の前年比成長率の合計をその年数で割って計算した17.6%(※1)

(※1) 前年比成長率の合計(10.0%+27.3%+12.9%+20.3%)÷4年≒17.6%

パターン2

4年間通しての成長率をその年数で割って計算した22.5% (※2)

(※2)(950-500)÷500=90%
 90%÷4年=22.5%

パターン3

毎年、一定の率で成長していく値となる17.4% (※3)

(※3) 500×(1+17.4%)4
=950

毎年の前年比成長率の合計をその年数で割る方法は、前年比成長率の算術平均を求めています。簡単に算出できますが、これは複利効果を無視した計算方法であり、CAGR(年平均成長率)の計算とは異なります。
なお、この方法は計算が簡便で、CAGR(年平均成長率)に近似した値となることもあるので、実務的にこの率を利用することもありますが、率が高い場合などにはCAGR(年平均成長率)の値とはズレが大きくなることもあります。また、CAGR(年平均成長率)の正式な計算方法ではないため、IR情報や銀行向けの資料などで使う場合には注意が必要です。

4年間を通しての成長率をその年数で割る方法は、単利効果を仮定した計算方法です。簡単に算出できますが、CAGR(年平均成長率)の計算とは異なります。

CAGR(年平均成長率)は、複利効果を考慮した幾何平均を用いる必要があります。

CAGR(年平均成長率)とは

CAGR (年平均成長率)とは、ある一定期間における各年の売上高などの成長率の幾何平均のことであり、一定の期間において毎年平均してどのくらい成長しているかを表します。主に企業の成長性や将来性を分析する指標です。

CAGR(年平均成長率)の計算には、複利効果を考慮する必要があった!

CAGR(年平均成長率)の計算方法が分からない社長に対して、財務部長は次のようなエピソードを教えてくれました。

*************************

ある日、財務部長が帰宅すると、妻と高校生の娘が会話をしていました。最近では、高校の授業でも金融教育が行われているそうです。

今日、授業で投資の基本知識を学んだから、ちょっとクイズを出すね。今、100万円を投資して3年後に130万円になったとするよ。このとき、毎年何%の収益率で運用できたのでしょうか?


3年間で投資額に対して30%増加したから、年平均の収益率は10%でしょ


そうじゃないんだ。前年比10%で毎年成長した場合って、100万円→110万円→121万円→133.1万円になって、130万円にならないでしょ


あら、ほんと。なんでかしら


学校では、複利効果って教わったよ。2年目が120万円ではなくて、121万円になるのは、1年目の増加分10万円に対しても10%(1万円)増加するって考え方。通常、投資の分野では複利を前提とするんだって。だから、預金も複利で増えていくって教わったよ


そうなんだ。新NISAも始まったし、複利効果を期待して投資してみようかしら


***************************

社長は、この会話でピンときました。


社長

そう言うことだったのか! 今、直面している成長率の計算にもこの考えが当てはまりそうだな

そうなんです。この複利効果を成長率の計算に使うのです


財務部長

CAGR(年平均成長率)の計算方法

そして、財務部長は次のようなことを説明したのです。

****************************

①まず、初年度(基準年)の売上をS、CAGR(年平均成長率)をr%とする。そうすると、1年後の売上はS×(1+r)になる。
②同様に、2年後の売上はS×(1+r)×(1+r)で表せる。
③同様に、3年後の売上はS×(1+r)×(1+r)×(1+r)で表せる。
④同様に、4年後の売上はS×(1+r)×(1+r)×(1+r)×(1+r)で表せる。
 【図表】の数値例では、基準年の売上が500万円で、4年後の売上が950万円なので、
       この2つの数値とrとの間には、次の関係が成り立つ。
        500万円×(1+r)×(1+r)×(1+r)×(1+r)=950万円

****************************


社長

なんか難しい計算だが、この方程式を解けば、CAGR(年平均成長率)が求まるわけか

そのとおりです。ですので、関数電卓や表計算ソフトを利用して求めます。計算してくれるサイトもあります


財務部長


社長

結果はどうなったかね

CAGR(年平均成長率)は17.4%でした


財務部長


社長

ちょっと確かめさせてくれ。500万円×1.174×1.174×1.174×1.174で、確かに950万円になる!

CAGR(年平均成長率)を用いるときの注意点

ただ、CAGR(年平均成長率)を用いるときには注意点があります


財務部長


社長

というと

CAGR(年平均成長率)は過去のデータに基づいて計算されるので、将来の予測にそのまま適用することはできないですし、CAGR(年平均成長率)は一定期間の平均的な成長率を示すので、期間内の変動やトレンドを無視することになるかもしれません。また、売上が安定せずに凸凹している場合には実態に合致しないので使えないかもしれません


財務部長


社長

なるほど。CAGR(年平均成長率)は有用ではあるが、使い方を誤ってはいけないということか

「CAGR(年平均成長率)」

CAGR (Compound Annual Growth Rate、年平均成長率)は、ある一定期間における各年の売上高などの成長率の幾何平均であり、一定の期間において毎年平均してどのくらい成長しているかを表します。主に企業の成長性や将来性を分析する指標です。幾何平均は、n個の正の数値の積のn乗根として定義される平均であり、比率の平均値を求める際に有効な手法です。

図

【CAGR(年平均成長率)をExcel(エクセル)で計算する場合の計算式】
Excelのセルに次の計算式(売上の部分は金額)を入れて計算できます。
「 =(N年度の売上/初年度の売上)^(1/(N年-初年))-1 」

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