借入れに頼らずに投資資金を捻出する方法とは?
2024年12月3日
質問
創業間もない「MIROK社」ですが、同社が扱う商品は近隣地域でも話題になるほど、順調に売上を伸ばしています。明らかに需要が高まっていることから、同社はなるべく早い時期の新規出店を考えていますが、創業からあまり日が経っていないこともあり、金融機関はなかなか融資のゴーサインを出してくれません。あなたがMIROK社の経営者であれば、投資資金の捻出のためにどのような策を講じますか?
パターン1
自身の預貯金を切り崩し、投資資金に充てる。
パターン2
高金利だが、融資をしてくれる金融機関を探す。
パターン3
資金繰りを見直すことで、投資資金を捻出する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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投資資金を確保し、スピード出店を実現
小売業を営む「MIROK社」は順調に売上を伸ばしているものの、創業間もない企業であることから、金融機関からなかなか融資を受けることができずにいました。しかし、スピード感のある出店の重要性を認識していたMIROK社の社長は、何か良い方法はないか友人の公認会計士にアドバイスを求めることにしたのです。友人は、投資資金を確保するために、ある方法を実践してみてはどうかと社長にアドバイスを行いました。これを実践したMIROK社は、無事に投資資金を確保することができ、短期間で新規出店を実現することができたのです。
半年前 ~ある日の経営会議にて
社長
創業してまだ間もないが、順調に売上は伸びているようだね
わが社で扱っている商品は非常に人気が高く、近隣地域でも話題になっているようです
経理担当
社長
いまの店舗だけでは、需要に応えるのは難しいかもしれない……。早いうちに新規出店を考えたいところだな
この需要を逃さないためには、私も早い時期での新規出店が重要だと考えています。そこで、金融機関から出店資金の融資を受けられないか相談してみたのですが、創業間もないという理由で断られてしまいまして……
経理担当
社長
そうか…。確かに、創業から間もない会社だから、金融機関も簡単には融資してくれないのは仕方がない。しかし、わが社の今後を考えると、早い時期の新規出店はなんとしても実現したいところだ。何か良い方法はないだろうか……
質問
創業間もない「MIROK社」ですが、同社が扱う商品は近隣地域でも話題になるほど、順調に売上を伸ばしています。明らかに需要が高まっていることから、同社はなるべく早い時期の新規出店を考えていますが、創業からあまり日が経っていないこともあり、金融機関はなかなか融資のゴーサインを出してくれません。あなたがMIROK社の経営者であれば、投資資金の捻出のためにどのような策を講じますか?
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パターン1
自身の預貯金を切り崩し、投資資金に充てる。
パターン2
高金利だが、融資をしてくれる金融機関を探す。
パターン3
資金繰りを見直すことで、投資資金を捻出する。
投資資金が必要な場合に、経営者が自身の預貯金を取り崩して会社に投入せざるを得ないこともあるかもしれません。しかし、その前に投資資金を捻出する方法があるかもしれません。
高金利であったとしても投資資金を金融機関から融資してもらうことが考えられます。しかし、高い金利を支払う必要があるのであれば、効率的な投資ではなくなってしまいます。金融機関から融資を受ける前に投資資金を捻出する方法があるかもしれません。
MIROK社の社長は、友人の公認会計士に相談したところ、資金繰りを見直すことで投資資金を捻出することができるとアドバイスをもらい、これを実践することにしました。どういうことかというと……。
回転差資金を活用する
新規出店のための資金調達に悩んでいた社長は、友人の公認会計士に相談してみることにしました。
社長
実は、早いうちに新規出店を実現したいと思っているんだが、創業間もないからという理由で、金融機関に融資を断られてしまって。どうしたら良いものか……
確かに、これだけのスピードで成長していれば、新規出店を考えるのは当然だ。継続した需要も見込めるし、私も新規出店を行うべきだと思うよ
友人
社長
しかし、融資が得られないのであれば、投資資金の捻出ができない。何か良い方法はないのかな?
それなら、回転差資金を活用して、投資資金を捻出するのはどうだろう?
友人
社長
か、回転差資金? なんだそれは?
企業は通常掛取引を行うだろ? 売掛金を回収し、買掛金を支払うことになる。このとき、下の図のように、売掛金を回収するまでの期間と、買掛金を支払うまでの期間にはズレが生じる。お前の会社だと、買掛金を支払うよりも、売掛金を回収する方が早かったよな?
友人
社長
ああそうだ。わが社の場合、買掛金は30日後に支払うが、売掛金は20日で回収される
ということは、こんな感じだな
友人
社長
これがなぜ、投資資金の捻出につながるんだ?
買掛金の支払いまでの期間が30日で、売掛金の回収までの期間が20日ということは、売掛金を回収してから買掛金の支払いまでの10日間は、回収した資金を投資や運用に回すことができるってことだろ?
友人
社長
なるほど! 売掛金を早く回収できるほど、買掛金の支払いまでの間は、回収した資金を投資や運用に自由に使えるというわけか。買掛金支払いまでの期間(買掛金回転期間)と売掛金の回収までの期間(売掛金回転期間)の差で、回転差資金というのだな!
そのとおり! 掛けで売らず、なるべく現金販売をすれば、売掛金の回収までの期間はゼロ日に近づくから、自由に資金を運用できる期間はさらに長くなる
友人
社長
なんだか魔法みたいだな。この仕組みをうまく使えば、早期に投資資金を捻出できそうだ! アドバイス、ありがとう!
現金販売にポイントをつけることで、売掛金の回収期間を短縮化
友人のアドバイスをもとに、社長は経理担当と相談し、回転差資金の活用に向けて動き出しました。
社長
売掛金回収までの期間をゼロに近づけることができれば、買掛金支払いまでの間、資金を運用することができる。これを使って、投資資金を捻出しよう
それは良いアイディアですね。少額でもクレジットカードで支払われるお客様もいらっしゃいますから、現金で支払ってくださった方には割引をしたり、新商品を優先的に購入できるようにするなど、優遇策を検討してはどうでしょう?
経理担当
社長
なるほど! 現金支払いへ誘導することができれば、売掛金回収までの期間をゼロに近づけることができる。これでより多くの回転差資金を生み出すことができそうだ!
MIROK社は、売掛金の回収期間を短縮化する取り組みを通じて、回転差資金を生み出すことができました。この資金を運用することで、あっという間に投資資金を捻出し、新規出店を実現することができたのです。
「回転差資金」
回転差資金とは、買掛金支払いまでの期間(買掛金回転期間)と売掛金回収までの期間(売掛金回転期間)の差によって捻出される資金をいいます。回転差資金が生まれることで、借入れによらずとも投資資金を捻出することができるようになります。
例えば、月間売上が2,000万円で、売掛金回収から買掛金支払いまで18日間(0.6か月)ある会社であれば、2,000万円を0.6か月間運用することが可能であることを意味します。
ユニクロ(ファーストリテイリング)が広島証券取引所に上場する直前、回転差資金を活用することで30店舗/年の多店舗出店を行っていたことは有名です(出典:安本隆晴(2013)『ユニクロ監査役が書いた伸びる会社をつくる起業の教科書』、ダイヤモンド社)。
なお、回収を早めることがお客様との信頼関係などにも影響したり、売上が水物であったりと、回転差資金を投資資金に充てる際にはリスクも考慮する必要があるでしょう。
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