貸借対照表上の無形固定資産(特許権)が倍増! 考えられる理由は?
2025年1月3日
質問
研究開発に力を入れているある会社の貸借対照表を前期と比較したところ、無形固定資産の金額が倍増しており、内訳を見ると特許権が増えているようですが、考えられる理由としてもっとも適当なのはどれでしょうか?
パターン1
支出した研究開発費が特許権に計上された。
パターン2
他社から特許権を購入した。
パターン3
元々持っている特許権の時価が大幅に上がった。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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同業他社の決算書の理解が進んだ
計測機器メーカーの「ミロ社」では、同業他社の決算書にも注目していますが、最近では、同業他社が特許権を取得したことにすぐに気付いて対策をとるといったこともできているようです。
しかし以前は同業他社の決算書の分析ができていなかったのです。
以前 ~なぜ無形固定資産が増加したの?
ミロ社のある日の会議でのこと。同業他社の貸借対照表(B/S)の前期比較資料が出てきました。その数値を見たミロ社の社長は驚きました。
社長
なんだ、この無形固定資産は?
前期と比較して、金額が倍増していますよね
営業課長
社長
なんで倍増しているんだろう。どうも、特許権が増えているみたいだな
ホントだ。かなりの金額ですよね。この特許権は、これまでの研究開発の成果じゃないのですか?
営業課長
質問
研究開発に力を入れているある会社の貸借対照表を前期と比較したところ、無形固定資産の金額が倍増しており、内訳を見ると特許権が増えているようですが、考えられる理由としてもっとも適当なのはどれでしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
支出した研究開発費が特許権に計上された。
パターン2
他社から特許権を購入した。
パターン3
元々持っている特許権の時価が大幅に上がった。
支出した開発費を倍増しても、その金額だけ貸借対照表(B/S)の特許権が増えるわけではありません。そもそも研究開発に係る諸々の支出は、日本の会計基準では原則として発生時に費用(研究開発費)計上されます。
他社から特許権を購入した場合、貸借対照表(B/S)上に特許権が計上されます。その他の理由も考えられますが、どんな理由で貸借対照表(B/S)上の特許権が増えるのでしょうか?
保有している特許権の時価が大幅に上がったとしても、日本の会計基準では、特許権は原則として取得価額に基づいて計上されるため、貸借対照表(B/S)上の特許権を時価に置き換えることはしません。
貸借対照表の特許権が表すもの
このようなことを話している時、経理部長が口をはさんできました。
いえいえ皆さん、そういうことではないんですよ
経理部長
社長
違うというのは、どういうことなんだ?
実は……
経理部長
経理部長は、日本の会計基準で特許権が貸借対照表の無形固定資産として現れるパターンを整理して教えてくれました。
①自社の研究開発の成果である特許権
⇒特許の申請に直接かかった費用のみが計上される。
なお、特許権取得のために行ってきた研究開発に係る諸々の支出は原則として
発生時に費用(研究開発費)計上される。
②他社から購入した特許権
⇒購入価額が計上される。
③他社をM&Aしたことにより取得した特許権
⇒M&Aで見積もられた特許権の時価が計上される。
実は、特許権が大きく増加したのは、今期、他社から特許権を購入したからではないかと思われます
経理部長
社長
そういえば、それらしい話を耳にしたことがあったかもしれない
自社で研究開発を行って特許権を取得した場合は、研究開発にかかった費用全部が無形固定資産に計上されるわけではなかったんですね
製造部長
そういうことなんですよ。あと、購入価額で特許権を無形固定資産に計上したら、そのままいつまでも特許権に計上され続けるわけではないですよ。企業によって異なりますけど、一定の期間(例えば8年間)にわたって定額で償却していき、その後は償却が終わって残高がなくなるんです
経理部長
社長
なるほど。そういうことだったのか
皆、経理部長の話に納得しました。同業他社の動向にも留意しつつ、ミロ社でも研究開発について継続的に議論し、対応を検討していく予定です。
「特許権の会計処理」
特許権を取得するまでにはさまざまな支出が必要になります。特に自社で研究開発をして特許権を取得するまでには、人件費や材料費、設備費など、多額の研究開発費がかかる場合が少なくありません。これらの支出を貸借対照表(B/S)の特許権に計上できるわけではありません。また、特許権は定額法等によって一定の期間(8年など)で償却していきます。
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