販売は順調なのになぜか資金不足の会社。その対策として最初に取り組んだこととは?
2023年10月3日
質問
食品加工・販売業を営む「ミロク食品」では、地元の主婦層をターゲットにした小売事業に追加して、飲食店、学校、病院などへの卸売事業を近年始めました。今のところ販売数は順調に増えているのですが、会社内では資金不足に度々悩まされています。あなたがこの会社の経営者なら、次のうちまずはどの行動をとりますか?
パターン1
銀行に相談して返済の延長や追加融資を受ける。
パターン2
月次の資金収支を把握しシミュレーションを行う。
パターン3
経営者の自己資金で補填する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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新たに始めた卸売事業も軌道に乗る
食品加工・販売業を営む「ミロク食品」は、これまで行ってきたスーパー内での惣菜販売に加えて、新たに始めた冷凍食品の卸売事業も軌道に乗り始めました。
しかし、1年前に卸売事業に参入してしばらくは、売れ行きは順調ながら資金面では苦労したのです。
1年前 ~販売数は増えているのに資金が足りないのはなぜ?
ミロク食品は、都市の近郊で食品加工・販売業を営んでいます。これまで、市内でスーパーが出店されるのにあわせて、店舗内に惣菜販売店の出店を続けてきました。当初は小さな個人店からスタートしたのですが、スーパーでの食品小売事業は年々売上が拡大していき、地元では誰もが知っている食品メーカーにまで成長しました。
近年、ミロク食品では、さらなる事業展開を目指して新商品の開発が行われました。社内での企画会議の結果、これまでミロク食品が小売事業で培ったノウハウを活かして、飲食店、学校、病院などを対象とした冷凍食品を開発し、卸売事業に参入することになりました。新たに開発した冷凍食品では、新規販売網の開拓が着々と進められています。ところが、卸売事業を始めて以後、社内で資金が不足するなど、資金面では不安定な状況が頻繁に起こっています。社長が担当者に調査を依頼したところ、卸売事業に参入するにあたって設備の購入や改修のため多額の負担があったこと、また、今のところ販売数で見た売れ行きは順調であり将来的には利益も改善していく見込みであることが伝えられました。しかし、担当者のレポートを読んでも、社長は納得がいきません。というのも、かつて小売事業のみで運営していた時には、会社の資金繰りにこれほど悩んだことはなかったからです。「販売数は増えているのに、なぜ資金がここまで不安定になるのだろうか」と社長は疑問に感じています。
質問
食品加工・販売業を営む「ミロク食品」では、地元の主婦層をターゲットにした小売事業に追加して、飲食店、学校、病院などへの卸売事業を最近始めました。今のところ販売数は順調に増えているのですが、会社内では資金不足に度々悩まされています。あなたがこの会社の経営者なら、次のうちどの行動をとりますか?
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パターン1
銀行に相談して返済の延長や追加融資を受ける。
パターン2
月次の資金収支を把握しシミュレーションを行う。
パターン3
経営者の自己資金で補填する。
災害などの緊急時に行われることはあり得ますが、平時にこの方法をとり続けると、銀行からの信用が低下して将来的に融資が受けられなくなるかもしれず好ましくありません。また、銀行に相談するにしても、銀行に見せる資料を作成する必要があります。
実は社長が選んだのはパターン2でした。月次で資金繰り表を作成して過去の推移を可視化し、将来の予測もしながら資金管理を行ったのです。
この選択肢もその場しのぎの方法です。財務面で公私の区別が曖昧になるなど、健全な企業経営の観点から見ても問題があります。
献血キャンペーンがヒントに!?
ある日、顧客との商談から帰る途中、社長が専務と一緒に街頭を歩いていたところ、ちょうど献血のキャンペーンをやっているところに出くわしました。
献血バスですか。久しぶりに見た気がします
専務
社長
最近はコロナ感染症の影響もあって、献血に協力する若者が減っているそうだよ
血液が滞ったり、足りなかったりすると、私たちにとってそれは大変なことですから。まぁ、会社にとってのお金みたいなものでしょう
専務
社長
そうだな。ははあ……お金かぁ。お金の流れが滞れば、会社も倒産するよな
専務との何気ない会話の中で、社長は、自社の資金の流れがしっかりと回っているのか点検してみる必要があることに気付いたのでした。
従業員を集めて点検へ
さっそく、社長は、従業員を集めて、資金繰りの実態について検討しました。
社長
最近、わが社の資金繰りはどうなのだろうか。商品の売れ行きは順調なはずだが
販売数は増えていますよ
小売事業担当者
ただですね。小売と卸売では、決済方法がだいぶ異なっているので、直ちに資金が回収できる訳ではないのです
卸売事業担当者
社長
それはわかっているけど、わが社の資金繰りとどのように関係しているの?
社長がおっしゃるように、会社全体での資金の流れが見えづらいのかもしれません
専務
小売事業と卸売事業の資金繰りへの影響を比較すると
専務と詳しく話をしたところ、地域の主婦を相手にした小売事業では、店頭での現金中心の取引だったのですが、卸売事業では掛けや手形による取引が主流であり、代金回収までの期間が異なっていることがわかりました。
実は、小売事業と卸売事業の資金繰りへの影響には、【図表1】から【図表3】のような違いがあるのです。
【図表1】小売事業(現金販売が中心)の場合
現金販売であれば、販売と回収が同時のため、
仕入代金を支払ってから、販売代金を回収するまでの期間が短い。
=資金が流出している期間が短い
【図表2】小売事業(現金販売が中心)で、在庫保有期間がとても短い場合
【図表1】で、さらに在庫保有期間が短い(仕入れた商品がすぐ売れる)場合
=資金が流出するよりも、流入するタイミングの方が早く、資金繰りがとても楽
【図表3】卸売事業(掛けや手形販売が中心)の場合
掛けや手形販売だと、販売してから回収するまでに時間がかかるため、
仕入代金を支払ってから、販売代金を回収するまでの期間が長い。
=資金が流出している期間が長い
ミロク食品では卸売事業に参入して間もないということで、新規顧客との間で取り決めた決済の期限などについても顧客の要望で長めに設定されたものが多数含まれていました。こうした事情もあって、担当者のレポートに書かれていたように帳簿上では売上が確認できても、実際の代金回収までに時間がかかっており、その積み重ねで現金収支では不安定な部分があったのです。
その後、社長は、草野球チームの仲間で、会計実務に詳しいSさんにこのことを相談しました。Sさんによると、資金管理を徹底している会社では、定期的に資金繰り表を作成しているそうです。Sさんの助言を参考に、ミロク食品でも毎月の資金繰り表を作成して収支の状況を社内でチェックするようにしました。資金関連の情報を継続して集めるようになると、どのタイミングで代金が回収できるかを会社全体、事業別、顧客別など目的に応じてシミュレーションを行えるようになり、決済条件の見直しなど代金回収までの期間を短縮するための改善や予測に基づく計画作成などに役立てられるようになりました。さらにこの書類は、ミロク食品の資金管理を外部に説明する際の裏付けにもなり、株主や取引銀行からの信用を高めるのに用いることができました。
「資金管理」
資金管理とは、入出金や資金残高をつかみ、資金が足りなくなりそうなら早めに資金を調達するなどの対応をすることを言います。
掛けや手形の取引を採用する場合、商品の売上、仕入が帳簿上で記録される時点と実際に会社にとっての資金が流入、流出する時点ではタイムラグが生じることがあります。資金繰り表を作成して、逐次資金の流れ(キャッシュフロー)を可視化することで、会社の資金管理に役立つ情報が得られます。
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最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
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