安定しない収益に悩むフィットネスクラブ、 その社長が選んだ道とは?

2017年5月23日

サービス業

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2017/05/23

質問

「フィットネス・ミロク」は結婚式を控えた女性をターゲットとしたフィットネスクラブで、悩みのタネは収益が安定しないこと。あなたがその経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

閑散期の料金を値下げして、客数を伸ばす。

パターン2

結婚式後も利用できるメニューを充実させる。
 

パターン3

婚活イベントを企画して、新規客獲得に注力する。
 

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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多くのお客さまが来店する、人気のフィットネスクラブ

「フィットネス・ミロク」の社長は、中堅のフィットネスチェーン店で5年程インストラクターをしていた人です。その間、ボクササイズやヨガ系のスタジオプログラムを担当するとともに、筋トレ・ダイエットなどのパーソナルトレーニングサポートも受け持ちました。栄養に関連する知識も深めることができ、フィットネスチェーン店では有意義なときを過ごすことができました。そして、それまでに養った能力を武器に、ついに4年前、独立し、フィットネス・ミロクを開業したのです。社長の妻もできる限りフィットネスクラブの運営の手伝いをしており、お客さまとも顔なじみです。

フィットネス・ミロクは、ターゲットを「理想のスタイルを手に入れて結婚式に臨みたい女性」に絞った、ブライダル特化型フィットネスとしてスタートし、周辺地域の評判を集める人気店になりました。多くのお客さまに来店していただけている様子で、業績も安定しているようです。

今でこそ業績が安定しているフィットネス・ミロクですが、実は2年前は全く違う状況だったのです。

2年前 ~忙しい春先、暇を持て余す冬場

ブライダル特化型フィットネスとして立ち上げたフィットネス・ミロク。「理想のスタイルを手に入れ、気に入ったウエディングドレスをまとって結婚式に臨みたい」。そんな女性をターゲットに、理想のスタイルに近づくための、3カ月集中プログラムが受け、多くの女性客を集めることができました。

結婚式シーズンの5~6月に向けた春先や、10~11月に向けた秋口には、たくさんのお客さまが汗を流し大忙し。ところが、それ以外の時期にはお客さまが減ってしまうため、暇を持て余してしまう状況でした。また、結婚式を控えた新規顧客の開拓自体にも苦労し、収益が安定しないことが社長の悩みのタネになっていました。ある閑散期のひと時、月次の決算書を見ていて、前月の損失が思った以上に大きかったことで、社長は危機感を募らせました。

質問

「フィットネス・ミロク」は結婚式を控えた女性をターゲットとしたフィットネスクラブで、悩みのタネは収益が安定しないこと。あなたがその経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

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パターン1

閑散期の料金を値下げして、客数を伸ばす。

パターン2

結婚式後も利用できるメニューを充実させる。

パターン3

婚活イベントを企画して、新規客獲得に注力する。

閑散期の料金を下げることで集客アップを図ることが考えられます。ただし、ブライダル準備のお客さまが、結婚式にはまだ間がある時期に、料金の安さにひかれて来店していただけるかを考えると、なかなか難しい所もありそうです。

フィットネス・ミロクの社長が選択したのはパターン2でした。実は、社長の妻が、以前のお客さまから聞いた一言がきっかけとなって、結婚式後もお客さまに継続して来店してもらえるしくみ作りを考えるようになったのですが……

婚活イベントを企画して、結婚予備軍の女性と接点を持ち、潜在的な顧客を集めることで、絶えず新規顧客を開拓し、収益を安定させることもできるでしょう。
ただし、婚活イベントに来ていただいた方のうち、実際にお客さまになっていただける方は、かなり少ないかもしれませんし、婚活イベントという不慣れなことを企画するのは容易ではなさそうです。

ターニングポイントは結婚式後の困り事に気付いたことだった

以前、結婚式を控えた時期にフィットネス・ミロクのお客さまだったAさん。トレーニングの甲斐あって、お気に入りのドレスで結婚式ができたと、式が終わるや否や感謝の言葉をかけてくれたお客さまです。

結婚式が終わり1年以上たった今では、社長の妻と一緒によくお出掛けする間柄になっています。今日も2人でお出掛け中です。

社長の妻 もう結婚して1年なのね。毎日楽しい?
Aさん うん、そうね。とっても楽しいわ。でもね、やっぱり早く子供が欲しいなぁ。この前お医者さんに言われたんだけど、体温って大事なんだってね。あと、骨盤矯正なんかも効果があるらしいなんて話も聞いたけど……
社長の妻 そうなんだ。うーん、体温を上げるんだったら基礎代謝を上げるのがいいかもしれないわねぇ。最近、運動はしてるの?
Aさん いやぁ、結婚式前は頑張ったけど、最近はねぇ。実はお宅のフィットネスに通い終わった途端、ほとんど運動しなくなっちゃって。ちょっとリバウンドしちゃった。主人に怒られちゃうかなぁ
社長の妻 うちに通ってた頃、基礎代謝を測定したはずだけど、覚えてる? また今度測ってみなよ。うちの体組成計使っていいからさ。あと、骨盤矯正に効果があるプログラム、確かうちの主人の友達が詳しかったはずだわ。ちょっと聞いてみるわね

社長の妻は、昼間こんなやり取りがあったことを社長に話しました。

実は、フィットネス・ミロクのお客さまだった他の方からも何人か続けて同じような話があったのです。皆さん、早く子供を授かりたいとか、母子ともに健康な出産をしたいといったお気持ちのようでした。ちなみに、基礎代謝の数値に関しては、皆さん、結婚式当時よりもだいぶ落ちていました……。
 
こうして社長は、結婚式が済んだ後も、女性がとても気にしていることがたくさんあることに気付くとともに、「お力になれることがいろいろありそうだ、何とかお力になれないものかなぁ」と考えるようになったのです。

その後、知り合いの医師や栄養士などの協力も得ながら検討を重ね、妊活・出産をサポートするプログラムを組み立てていきました。例えば、ボクササイズやヨガなどを織り交ぜた運動不足解消・ストレス発散・冷え症対策プログラムや、栄養改善のサポート、骨盤矯正プログラムなどを取り入れる、などの工夫です。ブライダル準備用の短期集中プログラムよりもゆったりしたペース、そしてお手軽な料金で、続けていただきやすいものにしました。
 
やがて、結婚式前に来ていただいていたお客さまの中に、妊活中に利用していただくプログラムや、出産に備えたプログラムに参加される方が少しずつ増えはじめ、社長もいろいろな経験を積み重ねることができたことで、プログラムもよりブラッシュアップされていきました。実は、結婚前は自分磨きのためにならお金をかけていた女性も、結婚した後はというと、家庭とか子供とかのためだったら、案外お金を使うのは惜しくないようです。
 
こうした取り組みの結果、フィットネス・ミロクは、ライフステージの変化に応じてトータルに女性の健康と幸せをサポートするクラブとして評判を呼び、継続して来店していだけるお客さまが増えていきました。従来のお客さまに新たなプログラムを利用していただくほうが、新規のお客さまを一から開拓するよりもずっと楽に進み、収益の安定化につながったのです。
 
以前、社長は「新規顧客獲得数」をとても気にしていました。結婚式を控えたお客さまにどれだけフィットネス・ミロクのことを知っていただけるか、そして利用していただけるかが業績に大きく影響していました。しかし最近では「顧客1人当たり収益」に注目し、お客さまにリピーターになっていただけるフィットネスを心掛けています。その結果、新規顧客獲得のためにかけていた広告宣伝費負担の軽減にもつながり、効率的に集客できるようになっているようです。フィットネス・ミロクは、「顧客生涯価値」を高めたことで成功したと言えるでしょう。

【ワンポイント解説】

「顧客生涯価値」

顧客生涯価値とは、一人の顧客が生涯にわたって企業にもたらす価値の合計を言います。新規に顧客開拓を行うよりも、今いる顧客に対してさらに商品やサービスを提供していくことで、企業がより多くの利益を獲得できるといった考え方で、いかに顧客生涯価値を高めるかがポイントになります。

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