患者数が右肩下がりの病院の経営を立て直せ! さて、中期経営計画の担い手は?
2019年3月3日
質問
近隣にできた新しい病院に患者が流れ、患者数が減少傾向にある「弥勒病院」。経営の立て直しを図るため、院長が大まかな方針を決めた上で、中期経営計画を策定することになりました。計画の中身についてはこれから検討していきますが、誰を中心に計画を策定するかで悩んでいます。あなたが院長なら次のうちどの行動をとりますか?
パターン1
経営コンサルタントに中期経営計画の策定を依頼する。
パターン2
院内に経営企画部門を設置して中期経営計画を策定する。
パターン3
院長自らが中期経営計画を策定する。
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快適な病院
「弥勒病院」は、快適だと評判が高い病院で、地域の患者はもちろんその家族も信頼を寄せる中核病院です。
ある日の午後、会計受付で複数の患者とその家族が、会話をしています。
男性患者S | この病院は、先生や看護師さん、受付の人もみんな親切ですよね |
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女性患者T | そうですねぇ。今回の入院でも、本当によくしてもらって。最初は入院して手術だって言われて不安だったんですけど、すぐに退院できることになりました |
男性患者S | そりゃあ良かった |
女性患者T | さっき、来週からはわざわざ1時間かけてここまで来なくても、週に1回近所のクリニックに通院すれば大丈夫だって言われたんですよ。弥勒病院の売上が減っちゃうんじゃないかしら |
午前の診察後、昼休みにたまたま通りがかったM医師も、笑顔で声をかけます。
M医師 | おや、Sさん、まだ会計が済まないの? |
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男性患者S | あ、M先生、いいんですよ。年寄りは病院で診てもらった後に、仕事があるわけじゃないんだから |
M医師 | でも、Sさんは診察後30分は経ってるよね。会計受付業務の改善も提案しなければならないな。もう少しすれば、早く会計が終わるようにしますからね。お大事に |
数年前 ~ライバル出現!
弥勒病院は、50年以上前に開業した総合病院で、多くの診療科をカバーする大規模な中核病院として、高い評価を受けてきました。
ところが、数年前、近隣にリハビリテーションの充実をうたった中規模の新しいK総合病院ができ、対応が丁寧だという評判もあって、患者が一時期K総合病院に行くようになりました。この地域はそれほど人口が多くないため、このままの状況が続くと、K総合病院と患者の奪い合いになってしまいます。
そこで院長は、弥勒病院の経営立て直しを検討することにしたのです。もちろん、長期的な計画も必要ですが、まずは目の前の課題に取り組むため、中期経営計画を策定することになりました。とはいえ、誰を中心に計画を策定していったら良いかに頭を悩ませていました。
質問
近隣にできた新しい病院に患者が流れ、患者数が減少傾向にある「弥勒病院」。経営の立て直しを図るため、院長が大まかな方針を決めた上で、中期経営計画を策定することになりました。計画の中身についてはこれから検討していきますが、誰を中心に計画を策定するかで悩んでいます。あなたが院長なら次のうちどの行動をとりますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
経営コンサルタントに中期経営計画の策定を依頼する。
パターン2
院内に経営企画部門を設置して中期経営計画を策定する。
パターン3
院長自らが中期経営計画を策定する。
経営コンサルタントに中期経営計画の策定を依頼することも考えられますが、経営については専門家であっても「医療については素人」であるかもしれない外部の経営コンサルタントを受け入れて、情報を提供したり助言を聞き入れたりすることにスタッフが抵抗を示し、うまくいかない可能性もあります。また、病院の課題を把握し対策を打つには、高額のコンサルティング料が必要になりそうです。
弥勒病院の院長が選んだのはパターン2でした。病院経営の課題に関する情報は現場にあります。こうした情報をいちいち吸い上げて院長が中期経営計画を立てるよりも、日々現場に接しているスタッフに任せた方が、時間的にもコスト的にも有効です。
院長自らがリーダーシップを発揮してトップダウンで中期経営計画を策定することも考えられます。しかし、病院ではそれぞれの現場で専門のスタッフが働いており、さまざまな業務プロセスをこなしています。したがって、院長がすべての情報を集約し、問題点を抽出してその解決策を考えるよりも、現場で働くスタッフに任せることが得策になります。
ターニングポイントは任せる勇気を持つことだった
弥勒病院の院長は、病院の経営について頭を悩ませていました。
院長の心の声 | <この3年間、患者数が減少傾向にある。今のうちに手を打っておいた方が良さそうだ。さて、どうしたもんだろう。どこから手をつけたらいいんだ> |
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その日帰宅した後も、病院の今後のことで頭が一杯な院長は、晩御飯がなかなか進みませんでした。 |
娘 | ただいま~。あーお腹空いた |
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母 | あら、遅かったわね。またバイト? |
娘 | うん。それがね、聞いて! 私バイトリーダーになっちゃったの |
母 | バイトリーダー? 何それ |
娘 | ほら、うちの店長、なんでも一人でやらなきゃいけないと思って、すぐにテンパるでしょ? そこで、本部からの指導で、店長の手足となるバイトリーダーを置くことにしたのよ |
母 | ふーん。でも、あんたに務まるの? |
娘 | それが、日々気になってたこととか、他のバイトメンバーたちの意見を取り入れて運営を改善することになったから、これからきっとお客さん増えるわよ。店長ってやること多いから、意外に細かいところまで見えていないのよ |
何気なく母と娘の会話を聞いていた院長ですが、ハッとしました。 | |
院長の心の声 | <そうか、自分でやらないで、任せればいいんだ! 決定権の委譲が必要だったということか> |
翌日から、院長は現場スタッフの話を聞くことにしました。すると、出るわ出るわ。院長が頭をひねっても出なかった課題がスタッフたちの口から湯水のように出てきたのです。
院長の心の声 | <何かのドラマの話じゃないが、まさに「問題は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」ってことか> |
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院長は課題だけでなく、解決策についても話をしてくれたスタッフをリクルートし、経営企画部門を立ち上げました。
院長の心の声 | <そうか、私に足りなかったのは任せる勇気だったんだな。もちろん、最終的な責任を負うのは当然、院長である私だが> |
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弥勒病院はその後、経営の立て直しが進み、患者数が増加に転じたのでした。
「決定権の委譲」
組織をうまく回すためには、決定者と情報を結びつけなければなりません。その方法には2つあって、1つは決定者に情報を移転させる方法であり、もう1つは、情報を持っている者に決定権を移す方法です。今回のように、病院を取り巻く環境やライバル病院の動向、患者の嗜好などに関する現場に固有の詳細な知識は、現場から理事長が吸い上げようとすると、時間がかかったり情報のもれが生じたりします。このため、情報を持っている者に決定権を移すアプローチが有効となります。
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