低迷するホテルのブライダル部門を救った柔軟な発想とは?

2017年1月13日

サービス業

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2017/01/13

質問

少子化と結婚式の多様化・競争の激化に伴い、「ホテルミロク京都」のブライダル部門の収入が伸び悩んでいます。あなたが当ホテルの経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

ブライダル料金の値下げを行う。

パターン2

結婚記念写真の前撮りサービスを拡大・充実させる。

パターン3

「おもてなしの経営」でアフター・ウエディングのフォローに配慮する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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やる気満々のブライダル部門

現在の「ホテルミロク京都」のブライダル部門は、担当部長以下、若いスタッフ一同、やる気満々の雰囲気が充満しています。次々に外国人のカップルの申し込みが舞い込み、日本人カップルの間でも新たなブライダル需要を掘り起こし、インターネットでも評判が高く、ブライダル関係のキュレーション・サイトでもしばしば取り上げられています。

2年前、ブライダル部門が伸び悩んでいました

2年前、「ホテルミロク京都」のブライダル部門の業績は伸び悩んでいました。その頃、社長とブライダル部門のスタッフとの企画会議が行われました。

社長 日本では、かつては特別な理由がない限り人生の中で結婚することが当たり前という意識が一般的だった。当ホテルでも、ブライダル関係の宴会収入が大きく、安定的な収益の柱だった。ところが最近は少子化の状況が顕著だし、結婚が当たり前でなくなった上に晩婚化も広がり、なかなか収入が上がらなくなっている
担当部長 結婚するにしても、結婚式が多様化しています。身内のみの結婚披露宴、友達を集めた会費制のパーティー形式、海外ウエディング、スマート婚等々、われわれホテルにとり競争が激しさを増しています
社長 最近の結婚式は、仲人をほとんど立てて行わないから、メインテーブルは確実に2人分の出席者が減っている。わがホテルは外国人観光客に大人気の京都で営業しているのだから、その立地の特徴を生かした新たなブライダルプランのアイデアを、ぜひ社員一同で出してほしい!

質問

少子化と結婚式の多様化・競争の激化に伴い、「ホテルミロク京都」のブライダル部門の収入が伸び悩んでいます。あなたが当ホテルの経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

ブライダル料金の値下げを行う。

パターン2

結婚記念写真の前撮りサービスを拡大・充実させる。

パターン3

「おもてなしの経営」でアフター・ウエディングのフォローに配慮する。

激しい競争に対抗するために、ブライダル料金を値下げすることもあるかもしれません。しかし、結婚式は、いわゆる一生の中でも「特別なハレの日」のイベントです。料金の値下げにより、質的な低下をもたらし、顧客満足度が大幅に損なわれる可能性があります。

ホテルミロク京都の社長が採用した企画は、結婚記念写真の前撮りサービスを拡大・充実させることでした。最近では、新郎新婦の記念写真を、挙式日より前の日に、ホテル内やホテルの庭などで撮影することも多くなっています。そのサービスを充実させることで、収益機会の見直しを図ったのです。例えば、撮影場所もホテル内だけでなく、ホテル外部にも広げ、名所旧跡やロケーションの素晴らしい、良き記念となる場所や施設を選んで撮影し、タレント並みの思い出深い写真集を作成することなどを行いました。顧客の対象もインバウンドの外国人カップルだけでなく、日本人にも新たなブライダル文化としてアピールしました。

ホテル事業は、典型的なホスピタリティ・マネジメントが大切な業種です。わが国伝統の「おもてなしの心」をもって、アフター・ウエディング(例えば1年・5年・10年目の結婚記念日に、ホテルディナ-招待、宿泊料の割り引きなど)のフォローに特別な配慮をすることも良いかもしれません。ただ、この種のサービスは多くのホテルですでに企画されているものであり、さらにきめ細かでユニークな企画が求められるでしょう。

日本の慣習だけでなく、海外の文化や慣習の良いところを積極的に取り入れることも!

実は、ソリューションのヒントは、企画会議における、ある若いスタッフによる経験談がきっかけでした。

スタッフA 私は、海外旅行が好きで、特に東南アジアや中国・韓国などを何度も歩いてきました。各地を歩いていると、しばしばウエディングドレス姿のモデル撮影中と思われるような情景に出会いました。例えば、韓国のソウルでも、中国の青島や大連でも、またベトナムのハノイでも。最近では、バルト三国の旧市街でも見かけました
担当部長 そうなんだ! それはすてきだね
スタッフA 一見、プロのモデル撮影かとも思いましたが、よく見ているとこれから結婚式を迎えるカップルの撮影風景でした。カメラマンやメークのスタッフを伴い、女性の衣装もいろいろと変えて、楽しそうにカメラに向かってポーズをとっていました。中国の青島の風光明媚(めいび)な海岸では、それこそ10数組のカップルが撮影中で、本当に壮観でした
社長 当ホテルは外国人に非常に人気のある京都に立地しているのだから、東南アジアなど外国人のカップルを対象にして、観光と合わせて、京都の神社仏閣や日本的情緒あふれる場所などで撮影する結婚記念アルバムを企画してみてはどうだろうか?
社長は、この若いスタッフの経験談を聞き、自分が今まで古い収益モデルにこだわっていたことに気づきました。そこで担当部長に、さらなるリサーチと企画内容の具体化を指示しました。

そして、海外のブライダルにおける写真前撮りの慣習を十分調査し、外国人向けのブライダル関連ビジネスを拡大・充実させました。

最近は、外国人の訪問客が急増しています。その人達の関心は、ブランド商品や日本製品の爆買いから日本文化や慣習にひたる観光に移りつつあります。外国人の若者に日本の名所で前撮り撮影を提供し、同時に当ホテルにも宿泊してもらいます。旅行会社とも提携し、日本観光と合わせて、前撮りアルバム撮影を行うようマーケティングしています。

日本人カップルにも、日本の伝統が息づく京都ならではの、名所を舞台にした結婚記念アルバムの作成を広めるよう、インターネット等を中心に積極的なPR活動を展開しています。東南アジアなどで人気の結婚式の前撮りアルバムサービスを、日本人のブライダルにも普及させるよう力を入れています。

現在は、撮影した写真や動画は、デジタル処理によりフォトブック等が作成できます。アナログ時代のアルバムに比べ、ずっと多くのバラエティーに富むスナップ写真を掲載でき、しかも重さも軽やかな、ソフトなフォトアルバムです。新郎新婦用だけでなく、親族等への追加注文の要望も続々と舞い込んでいます。フォトアルバムをDVDにして、結婚式・披露宴の参加者全員に引き出物として贈る提案も好評です。

このような収益機会の見直しをした結果、「ホテルミロク京都」のブライダル部門の営業収入が増加し、部門別の営業利益率もアップしました。また、国内外の若者からのブランドイメージが向上し、認知度もアップしました。日本の伝統的なブライダル慣習にとらわれずに、外国の興味深い慣習なども積極的に取り入れ、ブライダル部門のさらなるサービスの革新を推進しているところです。
【ワンポイント解説】

「収益機会」

企業は、さまざまな顧客に、さまざまな商品やサービスを、さまざまな方法で提供して収益を上げています。このような、収益が得られるチャンスのことを収益機会といいます。企業が生き残り、あるいは成長していく上では、誰に、何を、どのように提供して収益を上げていくか考え、新たな顧客層を開拓したり、新サービスを提供したりするなど、収益機会を見直すことも必要になってきます。

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