【特別掲載】会計が身近になった! 学生に興味を持たせたアイデアとは?

2017年8月3日

その他

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2017/08/03

特別掲載にあたって

「経営センスチェック」サイトでは、ストーリー仕立ての記事を通じて、経営の中で活きる会計を実感し、会計を身近に感じていただくことを目指して記事を掲載して参りました。会計を身近にするための取り組みとしては、本サイトの記事執筆メンバーでもある片山覺氏(※)が、学生向けに実践してきたものもありますので、この度サイトオープンから1年がたちましたことを記念し、「経営センスチェック」の記事形式にし、特別掲載としてご紹介させていただくことと致しました。
(※片山覺 MJS税経システム研究所顧問/早稲田大学名誉教授)

質問

ある大学の商学部の授業で、学生の会計学離れが進み、会計学教員が悩んでいました。会計に興味を持たせるために担当教員が実践したのは次のうちどの方法でしょうか?

パターン1

出席を厳しく管理し、成績評価基準で出席点のウエートを高くする。

パターン2

会計専門家や企業の経理・財務の担当者を講師として招く。
 

パターン3

会計学を経営と結び付けて主体的に学ぶように仕向ける。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
イメージ01
イメージ02

やる気に満ちあふれた教室内で学生が話しています

学生1 これまでなかなか会計に興味を持てなかったんだけど、実際の決算発表の記事を毎日読んでたら、だんだん企業経営の実際が実感できるようになってきたよ。会計を学んで良かったよ
学生2 同感! 増益決算だったらその理由を、減益決算だったらその原因を分析するように心掛けてたら、最近は今後の業績の予想も考えるようになったよ
学生3 私も前は、会計や会計情報って経理や財務の担当者だけに必要な知識かなと思ってたんだけど、最近は経営と密接な関係があることが実感できるようになってきたわ

以前は ~進む会計学離れに悩む大学教員

学部内の教員同士で次のような議論がされました。

教員A 学部の各系列の中で、最近会計学のゼミ応募者が減少しているようだなぁ
教員B マーケティングや広告論などのゼミは、面白そうで人気があるみたいだけどね。会計学は、なんか堅苦しくて、あまり面白みがないようだ。簿記や会計基準も段階を踏んで学ぶ必要があるから、面倒くさいって敬遠されがちだ
教員C 公認会計士の人気が低下していることが、学生の会計学離れに拍車をさけているのかもしれないね
教員B 確かに、公認会計士試験の受験者も伸び悩んでいるよね。大企業の会計不正問題も社会的に話題となっているのが影響しているかもね
教員A 企業の経営って、いろんな要素が有機的に結び付いて成り立っている。会計や財務は実際の経営の中で重要な役割を果たしているのは間違いない。学生がそのことに主体的に気付けば、学習の意欲も増すし、会計学への取り組み方も大きく変わってくると思うんだが……。何か良い方法はないだろうか……

質問

ある大学の商学部の授業で、学生の会計学離れが進み、会計学教員が悩んでいました。会計に興味を持たせるために担当教員が実践したのは次のうちどの方法でしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

出席を厳しく管理し、成績評価基準で出席点のウエートを高くする。

パターン2

会計専門家や企業の経理・財務の担当者を講師として招く。
 

パターン3

会計学を経営と結び付けて主体的に学ぶように仕向ける。

学生に対して出席の管理を厳しくし、成績評価にあたって、出席点のウエートを高くすることも考えられます。できるだけ出席させ、講義やレポートを課すことを通じて、会計学に興味を持たせることもあり得ますが、教員側からの上から目線だけでは真の教育効果は期待できません。

公認会計士・税理士のような会計専門家や、企業の経理・財務の担当者を招き、実務の観点から会計の意義や位置づけを語っていただくことも考えられますが、適当な人を探し、諸調整を経て講演していただくことは容易ではありません。

会計学担当の教員Aが実践したのはパターン3でした。会計学の学習を実際の経営の問題と結び付けて、学生自身が主体的に学習意欲を高めるように仕向けたのでした。そのアプローチは具体的にどういう方法だったのかというと……

毎日、日経新聞を読み、自分が気付いたことをノートにメモを取ること

会計学担当の教員Aが学生たちに与えた課題は、日本経済新聞を毎日読んで自分で気付いたことをノートにまとめさせることでした。このノートのことを日経メモノートと名付けたのですが、日経メモノート作成の要領は次のとおりでした。

  ① 毎日、日経新聞の記事を読み、会計の観点から企業決算や企業経営の動向を考える。

② メモノートはPartⅠとPartⅡに分け、PartⅠには取り上げた記事の要約、PartⅡには、その記事に関する自分のコメントを書く。PartⅡにはどんなことでもいいから積極的に自己の気付きを発信する。

③ 2週間ごとに、メモノートを提出し、気付いたことを教室で発表させる。

④ 教員はすぐにレポートを宅配便で自宅に送り、週末に読んで、翌週の最初の授業時間に返却する。3カ月ほどのセメスターに平均6~7回ほど繰り返す。平均の受講者数は、80~100人ほど。

⑤ 学期の最後のレポート提出時に、今まで自分が作成してきたメモノートを読み直し、「総括メモノート」を作成させる。

日経メモノートを経験した学生の感想例(要旨のみ)

日経メモノートを経験した学生からはさまざまな感想が寄せられました。そこからは、会計学を経営と結び付けて主体的に学ぶようになった学生たちの姿が見て取れました。

  日経新聞は堅苦しいメディアと敬遠していたが、メモノートを作成することにより、現実の生の動向を感じ取ることができ、商学部で学んでいるさまざまな学問のつながりや重要性が認識できた。
  ただ情報を受信するのではなく、「なぜ?」と いう視点を持って、発信される情報に対して 向き合うことができるようになってきた。
  以前の自分と比べて、知的好奇心が旺盛になったと感じる。実家に帰った時、父親と話をすると、父が知らないことも知っていることがあり驚かれた。
  メモノートを通してものの見方が変わったし、生活の中での物事に対する見方や姿勢が変わったと感じる。
  就職活動にも役立った。面接でも最近の動向について質問された時に、普段から自己のコメントを作成していたので、堂々と答えることができた。自分の考えや意見をアウトプットする習慣が付き、就活に向けて良い経験となった。
  経営側の視点で企業を見ると、その企業がなぜそのような戦略を取っているのかなど、今まで見えてこなかった新たな視点で物事が見えるようになった。これから社会に出ていく自分にとって、このような形でさまざまな企業にアプローチできたことは、自分でも「経営(戦 略)」を「分析」するという力が確実に付いたように思う。
  今後の新聞の読み方について次のような指針を学んだ。①「なぜ」の視点で記事を読む。 ②新聞を主体的に読む。③継続的に読み、記事同士のつながりに注目する。④「なぜ」の理由を自分で考える。⑤「なぜ」を繰り返す。⑥新聞以外でも「なぜ」の視点を適用する。
  個々のニュースがさまざまな関連性を持っていて、時系列的に展開していくことがよく実感できた。
  日経を読むだけで、こんなに社会が見えるとは思わなかった。今まで知らなかったことが分かるようになる上、疑問を持って記事を読むことで、興味を持ち、知りたいという欲求が生まれるようになった。
学生は大学でさまざまな科目を学びます。一見すると無関係に見える項目でも実際には相互に深い関連性を持ち、学生の幅広い視点や見識を向上させるものです。

学生自身がそのことを自覚してくれるのは非常に大切です。このレポートでご紹介した知的好奇心にあふれた「メモノート・スピリット」は、学生時代だけでなく、社会人になっても人生の生き方に大きなプラスとなるはずです。

ビジネスパーソンでも、数字を敬遠せずに、経営と結び付けて会計に取り組むことで、その役割や重要性をより身近に実感できることになるでしょう。 
 
関連リンク片山覺稿「日経メモノートのすすめ~大学におけるある実践を参考に~」
MJS税経システム研究所『Monthly Report』第100号(2017年5月発行)P22~25

本冊子は国立国会図書館にも所蔵されています。
コチラを参照

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