働き方改革を後押し! 残業削減に効果を発揮した方法とは?
2018年7月3日
質問
都内にある、教育書籍などを取り扱っている「ミロク出版」。以前から社員の残業が多く、残業代がかさんでいました。あなたが管理部長なら次のうちどの行動をとりますか?
パターン1
残業を減らすよう、社内に周知する。
パターン2
勤怠報告やその承認の仕組みを見直す。
パターン3
上司が率先して、定時に帰る。
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残業の少ない出版社
「ミロク出版」は、主に教育書籍などを取り扱っている、都内にある出版社です。
営業マン | 今日はこれから、新しい書籍の営業で書店回りをしてきます |
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営業部長 | どこまで行くんだい? |
営業マン | T駅周辺を回ってきます |
営業部長 | じゃあ、今日は直帰だね |
営業マン | はい、そうさせていただきます |
営業部長 | それにしても、お互い最近は残業しなくて済むんで助かるよな |
営業マン | そうですよね。今夜は友達と夕飯食べに行けます! |
今でこそ定時帰りが当たり前になりましたが、半年前までは残業が多いのが悩みだったのです。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。
半年前 ~残業の多い出版社
ミロク出版の社員は日毎の勤務時間の実績を「勤怠報告書」に記載し、1カ月に1回部長の承認をもらった上で、人事担当に提出しています。以前、「勤怠報告書」を毎週提出することにしようとしたこともあったのですが、そのときは「ただでさえ忙しいのに事務作業を増やす気か!」、「勤怠報告のためにわざわざ会社に戻るのは面倒」などと文句が出て、うまくいきませんでした。
現在、ミロク出版では、月初から3営業日目を前月の「勤怠報告書」の提出締切日としており、人事担当は各社員から提出された「勤怠報告書」を給与計算ソフトに入力し、給与計算などを行っています。そして、月初から5営業日目に、各部署の責任者にその部門メンバーの勤怠実績集計結果が知らされています。
そして先程、管理部長から自部門のメンバーの勤怠実績集計結果を知らされた営業部長は頭を抱えてつぶやいたのです。
営業部長の心の声 | <あーあ、また管理部長に嫌味を言われちゃったな、うちの部門は残業が多過ぎるって……> |
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その日、営業部長は特に残業時間の多かったAさんとB君それぞれに残業が多いことを伝えましたが、二人とも「分かりました。ただ、今言われても……」と不満な様子でした。 ミロク出版では、営業部に限らず、どの部署でも少なからず同じような状況が生じており、残業代がかさんでいました。こうした状況に管理部長は、何とかならないものかと悩んでいました。 |
質問
都内にある、教育書籍などを取り扱っている「ミロク出版」。以前から社員の残業が多く、残業代がかさんでいました。あなたが管理部長なら次のうちどの行動をとりますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
残業を減らすよう、社内に周知する。
パターン2
勤怠報告やその承認の仕組みを見直す。
パターン3
上司が率先して、定時に帰る。
残業を減らすよう、社内に周知することにより、残業削減に対する社員の意識を高めることができるかもしれません。しかし、各社員の勤怠状況を適時・適切に把握しないまま、各自の意識に任せていたら、本来やるべき業務の手を抜いてしまったり、月1回の勤怠報告の締め日間際の勤怠時間を過小に報告したりといった弊害が生じるおそれもあります。
ミロク出版が選んだのはパターン2でした。勤怠報告やその承認の仕組みを見直したのですが、どんな見直しをしたのかと言うと……
職場によっては、上司が帰るまでなかなか帰りづらい、という場合もあります。そのため、上司が帰ることで皆が帰り、残業が減ることもあるでしょう。しかし、社員が外出している場合には上司が帰るまで帰りづらいという状況は当てはまらず、外出する社員が多い会社では有効ではないかもしれません。
勤怠管理のムダを減らした、とっておきの方法とは
ミロク出版の管理部長が、かさむ残業代について悩んでいた頃のことです。計測機器の専門商社であるT社で人事担当役員を務めている友人と、久しぶりに食事をすることになりました。
管理部長 | そういえばお前の会社って専門商社だから、営業マンが多いだろう? 当然、外出する社員も多いよな? |
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友人 | おー、そうだな |
管理部長 | それじゃあ、営業マンの勤務実績をつかむのって結構大変なんじゃないのか? |
友人 | どういうことだ? |
管理部長 | うちは1カ月に1回、各社員から勤怠報告書を提出してもらってるんだ。以前、報告書を紙で週1回提出してもらおうとしたこともあったんだが、現場の反発も大きくてなぁ……。それで、今は月1回勤怠報告書を集計してる |
友人 | なるほど |
管理部長 | しかし、いざ集計してみると結構残業代がかさんでいてなぁ……。そこで驚いても後の祭りだけどな…… |
友人 | そういうことか。うちじゃあ、これが大活躍してるぞ |
そう言いながら友人は背広の胸ポケットに手を入れました。そして、スマホを取り出したのでした。 T社では毎日勤怠を報告することになっていて、スマホを使って外出先からでも勤怠報告を上げることができるというのです。勤怠報告のためにわざわざ外出先から戻る必要もありません。 何よりも感心したのは、毎日勤怠実績がつかめ、残業推移の予測までしてくれることでした。いくら紙の勤怠報告書に勤怠実績を記入していても、なかなか残業の状況は見えません。その日までの残業時間が集計され、分かりやすくグラフ化されていれば、状況は一目瞭然になります。残業が増えそうになっても事前に対策を考えることができます。例えば、至急の案件でないにもかかわらずわざわざ残業して対応したり、スタッフ間の業務の割り振りがうまく管理できずに特定のスタッフに残業が集中したり、必要水準以上の業務を行って残業したりといったことについて、管理者はすぐに状況を確認し、速やかに対応を考えることができるのです。 その後、ミロク出版でもT社と同様の勤怠管理の仕組みを導入することにしました。 スマホによる勤怠管理の仕組みを導入した後のある日のことです。営業部長に、スタッフの残業時間に関するアラートが届きました。 |
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営業部長の心の声 | <おっ、今月のB君の残業時間が40時間を超えそうだと? すぐにB君に状況を確認し、対策を考えないとな> |
スマホによる勤怠管理の仕組みを導入した結果、現場の営業マンの事務負担を増やすことなく、従来発生していた「タイムリーに勤怠実績を把握できないことによる対策遅れのムダ」、「人事担当が別途給与計算のために勤怠入力するムダ」なども減らし、残業時間を大幅に削減することができたのでした。
そればかりでなく、“労務実態の見える化“が実現したことで、社員に過重労働が発生していないかなど労務コンプライアンスの向上にも貢献したのでした。
「勤怠管理」
企業には、従業員の労働時間を把握するなど、労働時間を適切に管理する責任があります。また、残業をさせた場合には、通常の労働時間の2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。労働時間は、従業員の自己申告やタイムカードの使用などにより把握しますが、残業過多になる前に対策をするために、できるだけタイムリーに把握できるように工夫しましょう。
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