コスト削減で利益を確保したい焼肉屋。社長が気付いた“コストをかける意味”とは?

2020年7月23日

飲食業

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2020/07/23

質問

最高級肉を手頃な価格で提供することで知られる「焼肉のみろく屋」。食材価格が高騰する一方で値上げが難しい状況の中、利益を確保するためには大幅なコスト削減を行う必要があります。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

増加してしまった食材費の削減を優先し、メニューを人気商品に限定する。

パターン2

一番コストがかかっている人件費の削減を優先し、従業員数を抑制する。

パターン3

顧客満足度を踏まえたコスト削減を優先し、サービス等にメリハリをつける。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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高品質と手頃な価格の両立を実現

「焼肉のみろく屋」は最高級肉を手頃な価格で提供することで知られ、グルメ雑誌にも度々取り上げられる有名店です。オープンから数年経ってもなお、予約がなかなか取れないと話題になるほどですが、仕入価格が高騰しているにもかかわらず、値上げをすることはせずに、オープン当初からの価格を守り続けています。お客さんに手頃な価格で最高級の焼肉を食べてほしいという一心で焼肉道を探求し続ける勉強熱心な社長は、肉の質を追求し続けるだけでなく、手頃な価格を維持し続けるためのアイデアについても日々検討を重ねているのです。

客A いやぁ、いつ来ても最高のクオリティの肉だね
客B このクオリティの焼肉を他のお店で食べたら、大変な金額になっちゃうよ
客C こんなに手頃な価格で良い肉を提供してくれて、本当にありがとう。また来るよ。次はいつ空いているの?

どのお客さんも、帰り際に次回の来店予約までして大満足で帰路につきます。社長はお客さんが喜んでくれる姿を見て今日も目頭を熱くするのです。

しかし、3カ月前はそうではありませんでした。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。
 

3カ月前 ~お客さんは入っているのに利益が出ない……

「焼肉のみろく屋」の入口には大きな生花が、店内にはいくつかの絵画が飾られ、ときどき入れ替えが行われています。

ある日の営業終了後、経理担当の社員はここ数カ月の会計帳簿を眺めながら首を傾げています。お客さんも入り、売上も上がっているのに、どうしたのでしょう。

社長 今日の売上も順調! この調子なら利益もたくさん出ているだろう
経理担当 社長、それが……。売上は順調なんですが、実はそれほど利益が出ていないんです。むしろ、ここ最近は食材の仕入価格が高騰しているので、赤字の月も出始めているぐらいで
社長 そ、そうだったのか。十分お客さんに来ていただけて、売上も順調だから何も問題ないかと思っていたよ。いったいどうしたものか……
経理担当 周りの店も値上げしているところは多いですし、ここは思い切って値上げをしてみてはどうでしょう?
社長 ダメだ! クオリティの高い肉を手頃な価格で楽しめるから、多くのお客さんが何度も足を運んでくれるんだ。値上げは最後の手段だ。もっと他に改善できることはないのだろうか……


クオリティの高い肉を手頃な価格で提供するためには、何らかの経営改善策を施さざるを得ません。しかし、安易に値上げをしてしまっては、多くの顧客をがっかりさせることにもなってしまいます。どうしたら良いのでしょうか。

質問

最高級肉を手頃な価格で提供することで知られる「焼肉のみろく屋」。食材価格が高騰する一方で値上げが難しい状況の中、利益を確保するためには大幅なコスト削減を行う必要があります。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

増加してしまった食材費の削減を優先し、メニューを人気商品に限定する。

パターン2

一番コストがかかっている人件費の削減を優先し、従業員数を抑制する。

パターン3

顧客満足度を踏まえたコスト削減を優先し、サービス等にメリハリをつける。

食材費が増加してしまったのだから、それに見合うだけの食材費削減を優先することが考えられます。人気メニューに限定することで、まとめ購入による食材仕入単価を抑制できますし、食材廃棄量も減らすことができます。しかし、食材費が増加したから食材費を削減するというだけだと、顧客満足度を低下させてしまう可能性があります。

一番コストがかかっている人件費部分の削減を優先することが考えられます。しかし、人財と言われるほど人は経営の要であり、貴重な経営資源です。コストの中で一番大きいから人件費を削減するというだけだと、サービスの質の低下を招き顧客満足度を低下させてしまう可能性があります。

「焼肉のみろく屋」の社長が選択したのはパターン3でした。社長は常連の顧客に対して顧客満足度調査を行い、顧客の満足度に影響しない要因を特定することにしたのです。どういうことかと言うと……
 

コストをかけるのは、お客さんに満足してもらうため

「焼肉のみろく屋」の社長は、社員とともにコスト削減の方法について議論を始めました。

社長 売上は順調なんだけど、どうやらコストがかかり過ぎているみたいなんだ。みんなも知っているように、うちはクオリティの高い肉を手頃な価格で提供することで多くのお客さんに喜んでもらっている。肉の質を下げるなどもっての他だし、できることなら値上げもしたくないんだ。コストを削減できるいいアイデアはないものだろうか
社員A 社長、私たちもお客さんが笑顔になってくれることが嬉しくて、毎日仕事を頑張っています。コストを削減することでお客さんの笑顔が見られなくなってしまったら悲しいです
社長 確かにそのとおりだ。コストというのは、お客さんの満足という対価を得るためにかけるものなのかもしれないね
社員B ということは、コストを削減したら、お客さんの満足も減ってしまうことになるんでしょうか
社長 な、なるほど……。安易なコスト削減は顧客満足を低下させてしまうかもしれない……。ん、待てよ……


このとき、ふと、10日前のことが社長の頭をよぎりました。マンション購入を検討中だった社長が、妻と不動産屋を訪れていたときのことです。

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<10日前>

不動産屋 どんな物件をお探しですか?
社長 この範囲内の地域で、駅からは徒歩5分以内、3LDK以上で……
不動産屋 そうしますと、こちらの物件はいかがでしょうか?
社長 これって、南向きじゃないんだね
それに、スーパーも小中学校もちょっと遠いんですね
不動産屋 そうしましたら、こちらの物件などはいかがでしょうか?
間取りがなぁ。収納スペースも少ないし
社長 部屋も全体的に狭いしなぁ


さらに社長夫妻からそれぞれの要望が出てきた結果……。

不動産屋 そうですか。となるとこちらの物件などはいかがでしょうか? お値段はこれくらいになってしまいますが……
社長・妻 えっ


あまりにも予算とかけ離れた金額に絶句した二人でした。

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10日前のことを思い出した社長は思ったのです。

社長の心の声 <何でもかんでも要望を取り入れていたらきりがない。予算には限りがあるんだから、我慢できる条件は捨てる、どうしても譲れない条件は残す……。これって、うちの店も一緒だ! うちのサービスのどこが削れて、どこが削れないのかを、店でも把握する必要があるんだ>


そして、社長は言いました。

社長 コスト削減策を考える前に、うちのサービスのどこが削れて、どこが削れないのかつかむ必要がありそうだ。そのために、お客さんが我々のサービスのどこに満足を感じているのかを分析する必要があるかもしれないな


社員との意見交換の後、社長は早速顧客満足度調査を実施することにしました。肉のクオリティ、価格、メニューの豊富さ、料理の盛り付け、店内の装飾などの中で、顧客はどこに重きを置いているのか、それぞれの項目について1点から5点で評価してもらうことにしたのです。その結果、肉のクオリティと価格は5点満点がほとんどで、顧客の多くが高い価値を置いているものの、店内の装飾については2点が多く、あまり価値を置いていないことが明らかになりました。生花や絵画等の店内の装飾物は調達や維持管理に少なからぬコストがかかっているのですが、顧客満足度にあまり影響を与えていないということが分かったのです。また、メニューの豊富さ、料理の盛り付けは3点が多く、肉のクオリティ、価格ほどには重視されていないようです。特に、「焼肉のみろく屋」のメニューの一部には手に入りづらい肉もあり仕入コストも高いのですが、多くのお客さんはそれほど重視してはいなかったのです。

この調査結果をもとに、「焼肉のみろく屋」は思い切ったコスト削減策に踏み切りました。顧客があまり重要視していない店内の装飾や珍しい肉の品ぞろえのためにかかっていたコストを削減することにしたのです。珍しい肉の品ぞろえを減らして食材費や調達の手間を減らしたり、こだわって時間をかけていた料理の盛り付けについては簡略化したり、生花や絵画等の支出を削減したりしました。これによって、必要以上にかかっていた食材費、アルバイトスタッフの数、消耗品費等を減らすことができ、顧客満足度を下げることなくコストの削減を実現することができたのです。

社長の心の声 <コストを削減することでお客さんの笑顔が見られなくなってしまったら本末転倒だ。コストをかけるのは、お客さんに満足してもらうためだったんだ!>


「焼肉のみろく屋」は、顧客に価値をもたらさない活動の削減によるコスト削減を行ったのです。
 

ワンポイント解説

「顧客に価値をもたらさない活動の削減」

コストというのは、お客さんの満足という対価を得るためにかけるものと言えるかもしれません。むやみにコストを削減すると、顧客満足の低下を招き、結果としてコストの削減額以上に売上を低下させかねません。コスト削減を検討する場合には、顧客に提供するサービスのうち、何が顧客に価値をもたらしているのかを見極め、顧客に価値をもたらさない活動を削減することが重要です。

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