売上が伸び悩む家具販売店が見つけたサバイバル法とは?

2017年4月3日

小売業

  • 小売業
2017/04/03

質問

量販店やホームセンターなどとの競争激化に伴い、「ミロク家具」の売上が伸び悩んでいます。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

思い切って超高級家具の販売に特化する。

パターン2

ネット販売・カタログ販売など、販売チャネルを多様化する。
 

パターン3

他業種と連携をとり、さまざまなサービスを提供する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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ゆったりとした家具売り場

住宅用の家具販売店である「ミロク家具」のお店を外から見ると、以前と変わらずあまりお客さんは入っていないものの、少し売り場の雰囲気が変わったように感じられます。家具の需要自体が伸びているわけでもなさそうなのですが、最近ではミロク家具の良さが口コミで広まっているようです。

2年前 ~今後の方針に悩む日々

このところ、首都圏をはじめ、都会では大型・高層マンションの建設が盛んで、ビルトイン・タイプの家具が増えてきました。また、一人暮らしの人も増えたことで、家具を購入しなかったり廉価なもので済ませたりすることも多いようです。

そんな中、ミロク家具では、長く使ってもらえる、中価格帯から高価格帯の家具を中心に取り扱ってきました。しかし、量販店やホームセンターなどとの競争激化に伴い、お店に足を運んでくださるお客さんの数も減りました。そのため、新たな経営戦略を定めなければ、生き残ることも難しい状況になってきたのです。

質問

量販店やホームセンターなどとの競争激化に伴い、「ミロク家具」の売上が伸び悩んでいます。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

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パターン1

思い切って超高級家具の販売に特化する。

パターン2

ネット販売・カタログ販売など、販売チャネルを多様化する。

パターン3

他業種と連携をとり、さまざまなサービスを提供する。

取り扱う商品の価格帯を絞るのが、この案です。超高級家具に限定することで、ターゲットとなる顧客層がはっきりするため、その顧客層が好むであろう接客方法や売り場の雰囲気作りなども考えやすくなります。
ただし、その商圏にターゲットとなるような潜在顧客がどれ程いるかなど、事前によく調査をする必要があるでしょう。

販売チャネルを増やすことで、お店まで足を運ぶ時間がない人や、ネット上でさまざまな家具を比較したい人、通販が好きな人など、これまで接点のなかった人も見込み顧客に加えることができます。
ただし、こうした方策は、既に他の家具販売店も採用しています。また、ネット通販各社も取り扱っているため、競争相手がさらに増えることになるかもしれません。ミロク家具ならではの特色を打ち出す必要があるでしょう。

ミロク家具が採用したのはパターン3でした。ミロク家具は、ホテルのコンシェルジュをヒントに、他業種と連携してサービス提供する“ワンストップ・サービス”のお店へと転換することで、どこにでもある家具店から脱却し収益の向上を図ることに……

ヒントはホテルのコンシェルジュ

経営戦略に悩んでいた2年前、社長は、気分転換のためにホテルのレストランで家族と夕食をとることにしました。仕事を終えて、約束の時刻にホテルのロビーに行くと、家族はまだ来ていません。そこで待ち合わせ場所が見えるラウンジでコーヒーを飲んで待つことにしました。本当にいろんな人たちがいるなぁと思いながら、ぼんやりとロビーを見ていると、「待たせてごめんね」と言いながら、妻と娘がやってきました。

必要なものがあったから、ホテルの人にどこで売っているか聞いて、ちょっと寄ってきたの
<ちょっと、って言うけど、随分待たされたけれどなぁ……>と心の中で思いながら、
社長 買えて良かったね
ホテルの受付って便利よねぇ。私がお店を聞いている間にも、観光案内や交通案内、ホテルの外のレストランまで紹介していたわよ
そんなサービスもホテルの魅力の1つよね。私も、魚料理がおいしいお店とか、桜が見えるロマンチックな場所とか、教えてもらっちゃった
社長 まったく、お前はデートのことしか考えてないのか! まぁそれはさておき、ホテルに来る人って、ただ宿泊したいんじゃなくて、買い物をしたい、おいしいものを食べに行きたい、その街を観光したいとか、やりたいことが他にもあるんだよな。コンシェルジュがいることで、ホテルは、泊まること以外のお客さんの希望についても一緒にかなえているんだ
そうよね。部屋だけでなく、サービス、さらにはその街自体も気に入ってもらう。そうすることで、またこの街に来てもらって、ホテルに宿泊してもらえる……。そんな感じかしら
社長の心の声 <うちの店でも、家具を売るだけじゃなく、それを置く部屋とか家全体に関してお客さまが“こうしたい”と考えていらっしゃることを実現するお手伝いができないものか……>

社長は社員たちにコンシェルジュの話をし、独自にあるいは他業種と連携することで、家具購入を考えている人に対して、どのようなサービスが提供できるか検討することにしました。ミロク家具は、家具の販売とともに他のサービスも受けられる“ワンストップ・サービス”のお店へと転換を図ることにしたのです。そして、検討を重ねる中で少しずつ見えてきたのが、“快適なくらし”というキーワードでした。

お店の一角に「コンシェルジュ・コーナー」を設け、他業種との連携を図り、ミロク家具の店に来れば、家具購入以外にも、それに関連したさまざまなサービスを1カ所で受けられるようにしました。

例えば、照明やカーテン・じゅうたんなどのメーカーと連携し、家具と合わせたときどのような雰囲気の部屋になるかタブレットですぐにシミュレーションができるようにしました。実は、お客さんが家具を購入する際には、照明やカーテン・じゅうたんなども含めた部屋全体のコーディネートをしてほしいとのニーズが結構多かったからです。特にミロク家具では中価格帯から高価格帯の家具を中心に取り扱っているため、それにマッチするようやや高級感のある洗練された室内空間でくつろぎたいというニーズをお持ちのお客さんが多くいらっしゃったのです。

また、寝具メーカーや家電メーカーと協力して、健康に効くベッド・布団や家電などに関する耳寄りの情報も集めました。比較的富裕層のお客さまが多いため健康にとても気を使う方が多かったからです。

そして、お客さんが気に入れば注文も受け、メーカーに取り次ぐ体制にしました。さらには部屋の内装まで手を付けたいという方のためにプチ・リフォームの取次窓口になったり、部屋の片付け代行業者の手配も行ったりしました。また、お子さんのいるご家庭では、お子さんの成長に合わせて子供部屋を見直すプランの提案なども始めました。

お客さんのご要望を丁寧に伺いながら、快適なくらしのトータルコーディネートをすることで、顧客数が増えなくとも、インテリアやカーテンなどの販売代行やリフォーム取次料など、連携による新たな収入源を獲得することができました。

こうしたサービスのアウトソース化により、自前で提供する際に生じるようなリスクを抑えつつ、家具販売よりも利益率の高いサービスを提供できるようになっていったのです。

快適な室内空間作りに協力してもらえるようなメーカーや販売店との付き合いが拡大するとともに、さまざまな相談事例も蓄積されていきました。その結果、最近では、お客さんから、“快適なくらしのことならミロク家具”と言われ始めているようです。

【ワンポイント解説】

「ワンストップ・サービス」

1カ所でさまざまなサービスが受けられ、用事が済むことを言います。例えば、複数の部署・庁舎・機関にまたがるような行政手続きを1つの窓口で一度にまとめて行えれば、利用者の利便性が大きく向上します。これは行政に限らず、企業の提供するサービスにも当てはまります。自社の顧客の用事が何かを考えてみると、顧客の利便性を向上させるワンストップ・サービスのタネが見つかるかもしれません。

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