大変だ、コロナ感染症の影響で今期は債務超過! ところで、債務超過って何?

2021年4月23日

※本記事は2023年2月17日に内容の一部を更新しました。

小売業

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2021/04/23

質問

コロナ感染症の影響で巨額の損失が出て債務超過に陥った可能性がある「みろく屋」。ところで、債務超過とは、債務が何を超過した状態でしょうか?

パターン1

債務超過は、債務が「当期純利益」を超過した状態

パターン2

債務超過は、債務が「資産」を超過した状態

パターン3

債務超過は、債務が「純資産」を超過した状態

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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少しずつ売上が戻り始めた

都内に雑貨店3店舗を展開する「みろく屋」は、社長が30年前に創業した中小企業です。

コロナ禍で売上が激減したものの、店内の感染症対策をしっかりとったり、ネット販売も拡大したりすることで、徐々に売上が戻り始めています。

コロナ感染症が拡大する中、会社がどうなるか心配した時期もありましたが、社長も管理部長も最悪の時期を脱したことを喜んでいます。

今でこそ、売上回復に向けて活気も戻ってきていますが、コロナ禍で最初に迎えた昨年の決算期末は大変だったのです。

まずい! 債務超過になったぞ!

新型コロナウイルスの影響で2020年4月から6月は大赤字に陥ったみろく屋の社長と管理部長が、8月に入り、取引銀行を訪問しました。

社長 やっと店舗に客足も戻ってきましたが、まだまだコロナ前の売上には戻っていません
銀行員 特に飲食店や小売店はどこも大打撃を受けていますが、我々銀行もしっかり支えるつもりですから、心配ごとなどありましたらすぐにご連絡ください
管理部長 ところで、心配していることがあるのですが
銀行員 何でしょうか?
管理部長 もし、今期の決算で債務超過になったとしても、追加の融資はお願いできるのでしょうか?
銀行員 現時点では何とも言えませんが、債務超過になったら基本的には追加の融資は難しいです
社長 なるほど。債務超過だけは避けなければいけませんね

こうして、銀行を出て、会社に戻る途中、社長は考えました。

社長の心の声 <ところで、債務超過ってどういうことだ? あの場では聞けなかったが、債務が何を超過した状態のことなんだ?>
 

質問

コロナ感染症の影響で巨額の損失が出て債務超過に陥った可能性がある「みろく屋」。ところで、債務超過とは、債務が何を超過した状態でしょうか?

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パターン1

債務超過は、債務が「当期純利益」を超過した状態

パターン2

債務超過は、債務が「資産」を超過した状態

パターン3

債務超過は、債務が「純資産」を超過した状態

債務超過は、債務が「当期純利益」を上回った状態ではありません。もしそうであれば、多くの会社があっという間に債務超過になってしまいます。
 

債務超過の説明として正しいのは、パターン2です。債務が「資産」を超過した状態とはどのような状態なのでしょうか。また、なぜ銀行は債務超過になると追加の融資が難しくなるのでしょうか。
 

債務超過は、債務が「純資産」を超過した状態ではありません。もしそうであれば、多くの会社が債務超過の状態にあることになってしまいます。
 

銀行で教えてもらった債務超過の重大さ

コロナ禍の最初の決算期末を迎え、1カ月が過ぎた頃のことです。管理部長が、完成したばかりの貸借対照表と損益計算書を持って、社長に報告に来ました。

管理部長 社長、まずいです。今期はコロナの影響で債務超過になったようです……
社長 何だって、B/SとP/Lを見せてくれ。うーん、確かに債務超過だ……
管理部長 来月にも銀行から追加の融資を受ける予定なのですが……
社長 悩んでいても仕方ない。とにかくすぐに銀行に相談に行こう

すぐに社長と管理部長は銀行に電話をかけ、アポイントを取りました。

銀行員 急にどうされたのですか?
社長 実は、今期の決算の数字が出てきたのですが、債務超過になったようでして
銀行員 えっ、本当ですか? 御社は債務超過にはならないと思っていたのに……。おかしいな

債務超過とは、赤字との違いとは

銀行員は管理部長から受け取ったB/SとP/Lを見ながら言いました。

銀行員 あれっ、債務超過ではないですね~
社長 えっ、でも、債務が“当期純利益”を超えていますよ
管理部長 社長、違いますよ。債務が“純資産”を超えると債務超過ですよ
社長 えっ、そうなのか? 俺の勘違いか?

そんな二人の会話を聞きながら、銀行員が説明を始めました。

銀行員 お二人とも、債務超過と言うのは、債務が“資産”を超えた状態のことを言うのです
社長・管理部長 えっ、そうなんですか?
銀行員 例えば、資産が5千万円、負債が8千万円だとしたら、純資産がマイナス3千万円になりますから、このような状態を債務超過と言うのです

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管理部長 なるほど、債務超過の意味を勘違いしていました……

銀行員はこの機会にと、債務超過の状態や赤字との違いなどについて詳しく説明してくれました。
債務超過とはB/Sの純資産がマイナスの状態、つまり、資産よりも負債が大きい状態を言います。また債務超過は、負債の返済ができなくなって倒産するリスクが高まっている状態です。

債務超過と赤字を混同する人がいますが、赤字とはP/Lの当期純損益がマイナスの状態、つまり、収益よりも費用が大きい状態を言います。赤字であっても負債より資産が多ければ債務超過ではありません。よって、単年度で少し赤字を出したということだけで企業の存続が危ぶまれるわけではありませんが、いつまでも赤字が続くといずれ債務超過になってしまいます。

図表

債務超過による問題

銀行員 資産より負債が大きいということは、もし倒産したら負債を全額は返済できないってことですよね。だから債務超過になるとその企業に対する信用が低下するので、銀行は追加の融資が難しくなるのです。倒産リスクも高くなります
社長 そういうことだったんですね。債務超過だといろいろと問題があるんですね。うちは債務超過ではなかったってことで安心しました!
銀行員 ただ、今期の赤字でだいぶ純資産が減っていますから、来期はがんばりましょうね
社長・管理部長 はいっ!
 

債務超過の状態でも資金ショート(資金が不足して期日までに債務の支払いができない状態)していなければ企業は存続できますが、債務超過だと企業の信用力も大きく低下し、金融機関からの借入も難しくなってくるので、資金ショートに陥る懸念も高く、とても深刻な状況と言えます。

債務超過を回避する対策、債務超過の解消方法

債務超過の状態は問題が多いため、債務超過にならないように回避策をとること、万が一債務超過になってしまった場合には早期に解消策をとることが大事です。対応策としては、例えば次のようなものが挙げられます。

 ①利益を増やす(業績向上)、②資本を増やす(増資など)、③負債を減らす(債務免除など)

また、債務超過に陥るリスクがある状況では、決算書(特にB/S)を定期的にチェックすることも必要でしょう。

債務超過の判断方法

債務超過かどうかを金融機関が判断する際はB/Sを使いますが、B/S上の金額そのままで判断するわけではありません。有価証券や不動産などに含み益があれば資産を増額して判断する一方、含み損があったり、不良債権があったりすれば資産を減額して判断します。つまり、B/Sの実態によって判断するわけなのです。

ワンポイント解説

「債務超過」

貸借対照表の負債(債務)が資産を超えた状態を言い、このとき貸借対照表の純資産はマイナスになります。
債務超過の場合にはいろいろな問題が生じ、例えば、銀行は基本的には追加の融資をすることが難しくなると言われます。また、上場企業の場合は一定期間の間に債務超過の状態を解消しなければ上場廃止になる可能性があります。

お知らせ

2021年5月3日号は、ゴールデンウィークの連休中のため休載とさせて頂きます。次号は2021年5月13日号となりますので、引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

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