小さなレンタル会社が信用力を高めることができた! その方法とは?

2018年5月13日

サービス業

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2018/05/13

質問

金融機関から借入れをして事業の拡大を図りたいと考え始めた「旅のみろく社」。あなたが経営者なら、会社の信用を高めて少しでも有利な条件で資金調達をするために、次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

地域の住民に会社をもっと知ってもらうように、毎週金曜日に近隣の清掃活動をしてアピールする。

パターン2

外部の経営コンテストに応募していることをホームページでアピールする。

パターン3

会社のホームページで、財務諸表を公表し、あわせて今後の事業の方針を財務情報に関連させて説明する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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資金調達に成功し、事業を拡大するレンタル会社

「旅のみろく社」は、スーツケースを始めとして旅行用小物まで様々なものを扱う旅行用品のレンタル会社です。昨年、地元の信用金庫から資金調達を受けて、事業拡大を達成しました。提携する旅行会社の数を増やし、より多くの旅行者の要望に対応できるように、従業員も増やしました。そして、昨年までレンタルする物品をWeb上での写真のみで紹介していましたが、近くに借りている倉庫を改築してショールームをつくり、今では現物を見てからレンタルしたいというお客さんの要望にも応えられるようになっています。

しかし、3年前は事業拡大に必要な資金の調達に悩んでいたのです。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

3年前 ~事業拡大の願いはあっても決断できずにいた社長

旅のみろく社は、団塊の世代が定年を迎えて自由な時間ができるようになると、旅行、特に海外旅行をするようになると見込んだ社長が5年前に設立した会社です。断捨離という言葉が流行した後でもあり、普段使わない旅行用のスーツケースは、所有するよりもレンタルが好まれるだろうと考えたのです。

スーツケース以外にも海外旅行でしか使わない変圧器や海外用プラグ等の小物も取り扱うことにしました。会社のホームページをリニューアルし、インターネットでのレンタル申し込みをしやすくするなどの工夫もしてきました。

その結果、仕事は少しずつ増えてきたので、従業員を増やしたり、店舗や倉庫も広くしたりしたいと考え始めました。そのためには、金融機関からの資金調達が必要で、少しでも有利な条件で借りたいと思っていました。 

質問

金融機関から借入れをして事業の拡大を図りたいと考え始めた「旅のみろく社」。あなたが経営者なら、会社の信用を高めて少しでも有利な条件で資金調達をするために、次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

地域の住民に会社をもっと知ってもらうように、毎週金曜日に近隣の清掃活動をしてアピールする。

パターン2

外部の経営コンテストに応募していることをホームページでアピールする。

パターン3

会社のホームページで、財務諸表を公表し、あわせて今後の事業の方針を財務情報に関連させて説明する。

これは、自社の社会貢献活動を地域の人達にもっと知ってもらえるようにアピールする方法です。それにより仕事が増えることが期待でき、会社の財務内容の改善につながることも考えられます。ただし、自社のいい面しか見せない場合には会社の信用は高まらないかもしれません。

これは、自社の経営に関わる取り組みを広く知ってもらえるようにアピールする方法です。それにより仕事が増えることが期待でき、会社の財務内容の改善につながることも考えられます。ただし、コンテストに応募しただけでは受賞した場合と違い、信用に足る会社との裏付けが弱いので、思ったように会社の信用は高まらないかもしれません。

これは、会社の財務内容を誰もがいつでも見ることができるようにして、その透明性をアピールする方法です。会社の財務内容がオープンとなることで、社長はそれを気にかけるようになり、その財務内容に問題点があれば改善したいと願うようになるでしょう。そのことが、会社の財務、そしてその背景にある事業に対する改善につながり、会社の信用が高まるものと思われます。

お父さんの会社って、株式会社よね?

3年前のある夜、家族で食事をしているときに、大学生になった娘から会社について質問されました。

大学の授業で、株式会社の決算公告について説明されたんだけど、お父さんの会社って、株式会社よね。決算公告しているの?
社長 官報に載せているよ。ざっくりした内容だけど
この前、会社のホームページをリニューアルしたって自慢してたよね。忙しいのに、「見ろ、見ろ!」とうるさかったじゃない
社長 見てくれたのか? で、どうだった? 写真、きれいだっただろう
そういう話じゃなくて、ホームページで会社の貸借対照表や損益計算書を公告していないよね。どうして?
社長 官報に載せているから、義務は果たしているし、何も問題はないだろう?
お父さんの会社はレンタル会社でしょ。成人式の日に問題になったレンタル会社があったじゃない。来年は、私も二十歳よ。危ない会社は財務内容を見れば分かるっていう話を授業で聞いたから、その会社のを見てみようとしたの
社長 ふ~ん
そしたらホームページはあるけど、財務情報はインターネットでうまく見つからないのよね。それで、財務内容が分からないような会社を信用して利用するのってこわいなって友達と話したのよ
社長 ……
そしてね、これまで社会的に問題とされた会社もいくつか調べてみたんだけど、上場会社を除くと、インターネットで財務情報を探せた会社がなかったの。だ・か・ら
社長 つまり、お前や友達は私の会社からはレンタルしないということか?
そうなるわね

透明性ある財務情報をネットで開示してみて

社長は、娘から言われたことが気になり、ホームページで決算公告することに切り替えることにしました。どうやら官報に載せるよりも安くつくことが多そうでした。

その後のある日、食卓では次のような会話がありました。

社長 今度から、決算公告はホームページを使うことにした
私が言っても聞かないくせに、この子が言うと素直に聞くのね
そんなこと、どうでもいいじゃない。それより、この前、日本相撲協会のホームページを見たんだけど、財務諸表が公表されてたわよ
何かおもしろいこと、書いてあった?
日本相撲協会が行っている本場所や巡業って、公益目的の事業なの。毎年ではないんだけど、結構儲かっているのよ
それで?
ちょっと気になったんだけど、公益目的の事業で結構大きな金額の交際費が計上されていたのね。平成28年度で4,800万円以上使ってて、平成29年度の予算では5,000万円以上使うことになっているの。公益目的の事業で交際費って何だろうって思ったわけよ
社長 いろいろ、つきあいってものもあるんじゃないのか?
公益目的の事業で?
それでね、お父さんに言わなきゃ、って思ったんだけど、ホームページで公開すればいいってもんじゃなくて、その内容こそが大切だと思うの
社長 どういうことだ?
おおざっぱな内容しか公開しなかったら、ごまかしていると勘違いされることもあるだろうし、いろんな科目ごとの金額を示す場合はそれを目にする人に分かりやすく、実態が伝わるようにした方がいいと思うのよ

これまで経理にあまり関心を向けてこなかった社長は、ホームページで財務諸表を公開することに決めてから、その内容を気にかけるようになったのです。

社長の心の声 <流動比率はどうなっているのか、売上高営業利益率や自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)はどうなっているのか>

これまで感覚的に把握したつもりになっていたことが、数値でしっかりと把握できるようになり、会社の弱点も明らかになってきました。このとき社長は思ったのです。

社長の心の声 <数値の良し悪しに関わらず、財務情報を出す以上は中身を理解してきちんと説明できるようでないといかんよな>

自社の財務諸表について、社長自らが説明できるようになり、加えて今後の事業の方針等についても、何をすればどの金額が変動するのかといった関係を示しながら、事業の可能性を金融機関に訴えることができるようになりました。そして金融機関に説明をする今後の方針や会社の強みなどについても、財務情報を補足する情報としてホームページに載せるようにしました。こうした透明性ある情報開示を行い、今後の方針や会社の強みなどを十分説明できることが会社の信用を高めることとなり、金融機関に評価され、資金調達がしやすくなったのでした。

【ワンポイント解説】

「決算公告」

中小企業では原則として、定時株主総会の承認後遅滞なく、貸借対照表またはその要旨を公告しなければなりません(会社法第440条)。官報や新聞の全国紙を利用した公告の他、会社のホームページ等を利用したインターネット公告(電子公告)も認められています。ただし、電子公告の場合は、貸借対照表の要旨ではなく、全文を公告しなければなりません。
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