夏休みを1カ月も取る飲食店。同業の店長から聞き出した利益確保のヒントとは?
2018年7月23日
質問
大学の近くで飲食店を始めようとしているオーナーシェフ。開店当初から人を採用するかどうか頭を悩ませています。あなたならどうしますか?
パターン1
人を採用せず、あなた一人で頑張る。
パターン2
飲食業の経験者を正社員として採用する。
パターン3
大学生や近隣の主婦をアルバイトとして採用する。
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1カ月も夏休みを取る定食屋
都心の大学近くで、こぢんまりと営業を続ける定食屋の「みろく亭」。かれこれこの地で10年も店を続けています。昼時になると大学生が押しかけ、近隣の飲食店と同様、そこそこ繁盛しています。
そのみろく亭のオーナーが、7月終わり頃、店のシャッターを閉めて、貼り紙をしています。
「8/1~8/31まで夏休みを取らせていただきます」
その様子を見ていた隣の飲食店の店員が言います。
隣の飲食店員 | うらやましいな~。1カ月も夏休みですか。僕も夏休み取りたいけど、無理だろうな~。うちの店は経営が苦しいからな~ |
---|---|
オーナー | お宅だって、昼時には猛烈に学生が押し寄せるじゃないですか。うちと変わりませんよ |
隣の飲食店員 | 確かにそうなんだよな~。うちの店もみろく亭さんも売上はあんまり変わらないように思うのに、なぜうちはこんなに経営が苦しくて休みも取れないのに、みろく亭さんは1カ月も休みが取れるんだろう |
オーナー | 良かったら今度、ヒントを教えてあげますよ。と言っても、喫茶店の店長に教わったヒントですがね。フフッ |
今ではオープンしてから10年も経ったみろく亭ですが、開店準備をしていた当時、オーナーは大いに悩んでいたのです。ちょっとその頃の様子をのぞいてみましょう。
10年前 ~高級ホテルのシェフをやめて、定食屋を始める
オーナーが高級ホテルを退職して、大学の近くで定食屋を始めようと、店舗探しなどの開店準備をしていたときのことです。オーナーが頭を悩ませていたことがありました。それは人の採用です。
質問
大学の近くで飲食店を始めようとしているオーナーシェフ。開店当初から人を採用するかどうか頭を悩ませています。あなたならどうしますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
人を採用せず、あなた一人で頑張る。
パターン2
飲食業の経験者を正社員として採用する。
パターン3
大学生や近隣の主婦をアルバイトとして採用する。
人を採用せずに頑張ると言っても、昼時は猛烈に混むわけですから、一人でお客さんの注文を聞いて、料理を作って、お勘定をして、さらに洗い物をするなんてとても無理でしょう。やはり人は採用する必要がありそうです。
昼時は猛烈に混むわけですから、ホールでの接客をすべて任せられる人を採用することも考えられます。しかし、毎月定額の給料を支払わなければならない「正社員」というところがひっかかります。
実は、オーナーが行ったことはパターン3でした。なぜ飲食業の経験者を正社員として採用するのではなく、大学生や近隣の主婦をアルバイトとして雇うことにしたのでしょうか……
長く経営している喫茶店の店長が教えてくれたヒントとは!
10年前。オーナーが大学の近くで定食屋を始めるための準備をしていたときのこと。大学のすぐ目の前にある小さな喫茶店に立ち寄りました。
オーナー | 店長、この喫茶店は随分とはやっていますね。僕が学生の頃からですから、もう20年以上ですよね |
---|---|
喫茶店の店長 | そうですね~。まぁ、細く長く経営しているってだけですよ |
オーナー | そんな謙遜して。でも、長くやっていくための秘訣があるんでしょ? 教えてくださいよ |
喫茶店の店長 | フフッ、それは、企業秘密ですから教えられませんが……、ヒントを一つ。実は長くやっている店にはちょっとしたコツがあるんですよ |
オーナー | えっ、何ですか? |
喫茶店の店長 | それはね、1カ月の夏休みを取れるようにしておくってことですよ。フフッ |
この日、オーナーはベッドに入っても喫茶店の店長が出したヒントが頭から離れませんでした。そして、うとうとし始めたとき、妙な夢を見たのです。夢の中でオーナーシェフは大学の近くで定食屋を始めていました。
【 夢の中で 】
オーナー | おいおい。一体どういうことだ? 今日はお客さんが一人も来ないぞ |
---|---|
店員 | オーナー、そりゃあ当たり前ですよ。だって、大学はもう夏休みですから。これから1カ月はお客さんなんて来やしませんよ |
オーナー | そうだった~。大学生の夏休みは1カ月もあることを忘れてた~ |
店員 | オーナー、そんな大事なこと忘れていたんですか? でも、ちゃんと僕の今月の給料は払ってくださいよ |
オーナー | そんなの無理だ~。店は倒産だ~ |
オーナーは汗びっしょりになって目を覚ましました。
オーナー | <今の夢は何だ? 予知夢か? 待てよ、そうか! 喫茶店の店長が出したヒントの意味が分かったぞ> |
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オーナーは開店準備の段階でやっておかなければならない大事なことがあったことに気付いたのです。
大学が夏休みに入ると、大学の周りには人がほとんどいなくなります。しかし、オーナーは店にお客さんが来なくなるこの時期の採算のことをよく考えていなかったのです。そこで、まずはザックリとですが、大学の休みの時期も考慮に入れて、月ごとに利益を確保できるかシミュレーションしてみることにしたのです。
その結果、正社員として店員を抱えていると、売上の増減に関係なく毎月固定費として発生する正社員の給料で経営は行き詰まってしまいかねないことが見えてきました。そのため、売上の増減に合わせて人数や時間を調整できるアルバイトを採用しておいたほうがいいと考えるに至りました。
大学近くの店のように、売上の季節性がある場合、費用もその季節性に合わせておかなければビジネスモデルが成り立ちにくいのです。
こうして、オーナーは年間を通じて利益確保ができるよう、大学生や近隣の主婦をアルバイトとして採用することにし、夏休みは思い切って長期休暇を取ることにしたのでした。
「売上の季節性」
季節によって売上が大きく増減する業種があります。例えばスキー場や海水浴場の近くの店などが典型です。売上に季節性がある場合、コスト構造もこの季節性に合わせて変動するようにしておかなければ、安定的に利益を出し、ビジネスを継続していくことが難しくなる可能性があります。
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