ABC分析とは? 「儲かっているはずが儲かっていなかった理由」もABC分析で判明

2019年1月3日

※本記事は2024年10月25日に内容の一部を更新しました。

建設業

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2019/01/03

質問

売上高の大きい顧客を分析し、大口顧客に多くの人員や時間を配分するようにしているのに、業績が伸び悩んでいる「ミロク建設」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

売上高の大・小にかかわらず利益額が大きい顧客を手厚く対応する。

パターン2

もう1年、今まで以上に売上高の大きい大口顧客を手厚く対応する。

パターン3

大口顧客ではなく、小口の顧客を手厚く対応し、件数を稼ぐ。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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ABC分析を適切に使えるようになったことで、着実に業績を伸ばしている会社

「ミロク建設」は首都圏で内装仕上工事を中心に事業を営んでいる建設会社です。創業から少数精鋭主義での営業を続けていますが、ABC分析を適切に使えるようになったことで、現在は、少ない人員で効率よく稼げるようになってきているようです。

今でこそ、着実に業績を伸ばすことができていますが、数年前の状況は、今とは全く違っていました。


数年前 ~ABC分析も導入しているのに、なぜ儲からない?

ABC分析とは

数年前のある日のこと、営業部長が社長にある提言をしています。

営業部長 社長、当社でもABC分析を導入しましょう!
社長 ABC分析?
営業部長 ABC分析とは、得意先を年間で受注した売上高の大きい順に、Aグループ、Bグループ、Cグループに分類して管理することで、重視すべき得意先を明らかにするための分析手法です
社長 なるほど。それで分類してどうするんだ?
営業部長 当社のように少数精鋭主義の会社では、全てのお客様に対して同じように人員や時間を割くことはできません。ABC分析を行うことで、重点的にリソースを投入すべきお客様とそうでないお客様とを分類して、限りあるリソースを配分する優先順位を付けるんですよ!
社長 それはいい! 早速、ABC分析をやってみてくれ

ABC分析の手順

ABC分析は概ね次の手順で行われます。これらの一連の手順を自動化した財務会計システムもあります。

手順1: 対象項目の選定並びにデータの収集
手順2: データのランキング(並べ替え)
手順3: 全体に占める構成比率並びに累積比率の計算
手順4: ABCランクの設定とランク分け
手順5: ABC分析用のグラフ(パレート図)の作成と分析

営業部長は早速、収集している売上高データを得意先別に整理し(手順1)、得意先ごとの売上高を多い順に並べました(手順2)。当該データについて、売上高合計に占める各得意先別売上高の構成比率を計算するとともに、その累積比率も計算しました(手順3)。

                   【図表1】構成比率・累積比率の計算イメージ売上高            (注)上表は売上金額下位の得意先は記載を省略している。

そして、得意先ごとの売上高の合計値が全体の売上高の70%の割合に達するまでの3社をAグループ、90%の割合に達するまでの4社をBグループ、それ以外をCグループに分類しました(手順4)。

さらにこのデータをもとにしたABC分析用のグラフ(パレート図)を作成・分析しました(手順5)。


【図表2】ABC分析のパレート図のイメージ

売上高


そして、Aグループに分類された顧客を最重要顧客として多くのリソースを配分するようにしました。

売上高によるABC分析の注意点

その結果、多くのリソースを配分した甲斐もあって、Aグループの顧客の売上高は順調に伸ばすことができたのですが、会社の業績自体は思ったほど伸びませんでした。

社長 ABC分析によって、売上高は順調に伸びているみたいだが、利益にはあまり結びついていないみたいだな
営業部長 確かにそうですが、最重要顧客との取引は増えているということですので、良い傾向ではないでしょうか
さらにもう1年、継続して取り組んでみましたが、売上高は伸びるものの、やはり会社の業績は伸び悩んだままという状況でした。
 

質問

売上高の大きい顧客を分析し、大口顧客に多くの人員や時間を配分するようにしているのに、業績が伸び悩んでいる「ミロク建設」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

売上高の大・小にかかわらず利益額が大きい顧客を手厚く対応する。

パターン2

もう1年、今まで以上に売上高の大きい大口顧客を手厚く対応する。

パターン3

大口顧客ではなく、小口の顧客を手厚く対応し、件数を稼ぐ。

実は、ミロク建設の社長が行ったことはパターン1でした。限りあるリソースを上手く配分するための便利なツールであるABC分析ですが、売上高によって顧客を分類することには大きな落とし穴が……
 

せっかく2年間取り組んできた方針ですから、簡単に変更することは難しいかもしれません。しかし、これまでと同じ結果にならないよう、まずは原因分析を行うことが必要かもしれません。
 

小口の顧客でも件数を稼ぐことで業績アップにつなげることができるかもしれません。ECサイトなどでは年間の取引件数が少ない商品も豊富に取り揃えることで、総売上高を大きくしていくロングテールという手法も使われています。しかし、実際に営業マンが動く場合はECサイトと違ってコストが大きくなるため、収支が見合うか注意が必要です。またミロク建設は少数精鋭ということなので、人員リソース的にも厳しいものがあるかもしれません。

ABC分析の使い方の見直し

このままABC分析による顧客管理を続けていいのか悩む社長が自宅に戻ると、その業界の裏情報を暴露するというテレビ番組を見ていた妻が話しかけてきました。

芸能人とか人気商売の人って、やっぱり大変よねー
社長 何が?
ああいう人たちってファンを大切にしないといけないじゃない。でも、ありがたいファンとありがたくないファンっていうの? ファンの中にも色々いるんだって
社長 ふーん、そうなんだ
あんまり興味ないって感じね。じゃー、問題。コンサートの全国ツアーとかにも全部来てくれて、すっごくお金をかけて応援してくれるんだけど、その分握手会の時間を自分だけ長くしてくれとか、そういう路線は嫌いだからやめた方がいいとか、主張も強くて対応にものすごく困るAさん。それに対して、お金のかけ方は普通なんだけど、静かに見守ってくれるタイプのBさん。芸能人にとって、どっちが良いファンと思われてたでしょうか?
社長 そりゃ、Bさんでしょう
正解! 本音を言うと、Bさんタイプが多いのが一番ありがたいんだって。ファンも亭主も手間がかからないのが一番よね
社長の心の声 <待てよ。手間はコストだ。もしかして、うちの大口顧客もコストがかかるAさんタイプだったのか?>

翌日、社長はAグループに所属している顧客の利益額を算出できないか経理部長に相談しましたが、ミロク建設では顧客別の損益管理を行っていなかったため、すぐに正確な数値を出すことは難しいとのことでした。

諦めきれない社長は顧客ごとの利益を把握したい意図を経理部長に伝え、何か良い方法はないか確認したところ、そういうことならまずは値引き要求や、営業工数など影響が大きそうな項目を営業部にヒアリングしてみようということになりました。

しばらくして、経理部長からヒアリング結果をもとに作成された資料を受け取り、おそるおそる資料に目をやると、そこには予想通りの数字が並んでいました。

その事実が判明したミロク建設では、売上高ではなく、利益額によるABC分析を行うようになりました。そして、その上位グループを優良顧客として重点的にリソースを配分するようになった結果、売上高は減ったものの、利益率は大幅に改善し、少数でも十分な業績を上げ続けられるようになったのです。

【ワンポイント解説】

「ABC分析」

ABC分析とは、数ある顧客や商品などを一様に管理するのでなく、重要度に応じてABCの3つのグループに分類し、重要度に応じてメリハリを付けた管理をするための手法を言います。顧客別や商品別の売上高や利益額によるABC分析をしたり、費用科目別によるABC分析をするなど、メリハリを付けて管理したい項目に応じて分析対象を設定します。
【関連情報】MJSシステムではさまざまな角度から財務データの分析ができます。ABC分析(パレート図)や得意先別の採算分析などの帳票(分析グラフなど)もご用意しています。

<ABC分析>
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<得意先別の採算分析>
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