銀行に聞かれても困らない? 固定資産投資の考え方とは?

2019年12月13日

製造業

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2019/12/13

質問

「ミロク金属工業」の当期末の決算が固まりました。ただ、この決算書を銀行の担当者に見せると、固定資産投資が自己資本を超えているので危険だと指摘されるかもしれません。あなたなら固定資産投資をどのように考えますか?

パターン1

固定資産投資が自己資本を超えているので問題ない。

パターン2

固定資産投資は自己資本の範囲内ですべきである。

パターン3

固定資産投資は自己資本と固定負債の範囲内であれば、悪くはない。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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綿密な固定資産投資計画を実行しています!

「ミロク金属工業」は、経営戦略室で綿密な固定資産投資計画を検討し、実行に移しています。取引銀行の評価も信頼性の高い状態が維持されています。
 
しかし半年ほど前のミロク金属工業の経営戦略会議ではそうではありませんでした。

半年前 ~銀行から問題点として指摘されないだろうか……

半年前のミロク金属工業、固まったばかりの決算書を見て、社長と経営戦略室長が話しています。

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経営戦略室長 この貸借対照表のとおり、わが社では現在、自己資本を超える固定資産投資をしている結果となっています。銀行から問題を指摘されるかもしれないと気になっているんです
社長 えっ、何でだ? うちは積極投資をしてるんだから、問題ないだろ?
経営戦略室長 しかし、過重な固定資産投資じゃないのかと銀行から指摘されやしないかと……
 

質問

「ミロク金属工業」の当期末の決算が固まりました。ただ、この決算書を銀行の担当者に見せると、固定資産投資が自己資本を超えているので危険だと指摘されるかもしれません。あなたなら固定資産投資をどのように考えますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

固定資産投資が自己資本を超えているので問題ない。

パターン2

固定資産投資は自己資本の範囲内ですべきである。

パターン3

固定資産投資は自己資本と固定負債の範囲内であれば、悪くはない。

固定資産投資が自己資本を超えていることは積極的に投資していることの表れかもしれません。ただし、固定資産投資は、長期的に資金の回収を図るものであるので、原則的には返済を要しない自己資本でまかなうのが望ましいとも言え、固定資産投資が自己資本を超えている場合には超過部分をどのような資金でまかなっているかに注意を払う必要があるかもしれません。

固定資産投資を自己資本の範囲内で行っていれば、財務安全性は高いと言えます。その一方で、自己資本の範囲内であることにこだわるあまり保守的になって投資を抑制すると、将来の企業成長を阻害するかもしれません。
 

固定資産投資が自己資本を上回っており、一部を他人資本でまかなっている状態ではありますが、他人資本の中でも固定負債でカバーできているので、長期的な財務安全性は問題ないと判断してもいいでしょう。その理由は何でしょうか?

就活中の息子の意見からヒントを得た!

ミロク金属工業の社長が自宅に戻ると、ちょうど大学4年生で就活中の息子が帰ってきたところでした。今年の就職市場は、売手市場のようで比較的順調な模様です。

息子 企業の方々との面接を受けているとさ、現実の社会の動きは臨場感にあふれてて、本当にすごいんだよ!!

息子は眼を輝かせて話してくれました。久し振りに息子とビールを飲みながらビジネスの苦労話を語ってあげました。社長も、自分の息子とビジネスの話ができる年代になったかと感慨深く、いつも以上にビールが進みました。その中で息子からはグループ討論でのことが話に出たのです。

息子 実はこの前、設備投資の資金調達をテーマに討論したんだ。そのとき経営指標のことも話題に出たんだ。勉強したかいがあったよ!

そのときの様子を生き生きと話す息子の話を聞きながら、社長は思いました。

社長の心の声 <この話題は、当社の経営課題と共通するテーマだ!>
社長 ちなみにそのときはどんな経営指標が出てきたんだ?
息子 固定比率とか固定長期適合率とか
社長 そんなのがあるのか。で、うちの会社だったらどうなる?

そう言うと、息子にミロク金属工業の貸借対照表の数値を見せたのです。

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企業の長期的な財務安全性を見る経営指標には、まず固定比率があります。
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社長 固定比率130%ってどういう意味なんだ?
息子 100%を超えているかどうかが1つの目安になるんだ。100%を超えてるから、固定資産投資の資金を自己資本では充当できてないってこと。長期的な財務安全性には課題があるっていうことかな
社長 そうなのか……

ちなみに、自己資本で充当できない部分は必然的に他人資本・負債でまかなうことになります。
 
その場合、他人資本・負債でも、どのような資金で調達しているかが問われます。そこでもう1つの長期的な財務安全性を見る経営指標に、固定長期適合率があります。
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社長 じゃあ、固定長期適合率81%。これはどう考えたらいいんだ?
息子 固定長期適合率は、固定資産投資を自己資本と固定負債とでどれだけまかなっているかを示す経営指標で、ミロク金属工業の場合は81%だから100%以下におさまってる
社長 うん
息子 だから、長期的な財務安全性には特に問題があるとは言えないと判断できるんじゃないのかな
社長 合格ってことか!

固定資産投資は長期にわたって資金を回収していくことになりますが、負債の中でも長期借入金や社債といった固定負債による資金調達であれば、長期にわたって徐々に返済していけば良いので、長期的な資金の調達・運用のバランスが維持されていることになります。

社長の心の声 <よし! 銀行の担当者に決算書を見せてもあわてなくて済みそうだな>

 

ワンポイント解説

「固定比率」と「固定長期適合率」

貸借対照表を使った財務安全性分析の基本的な指標には、固定比率や固定長期適合率といった固定資産に関わるものが含まれます。これらの指標は銀行が融資先の決算書を分析する際にも使われることが多いので、見方を知っておくと良いでしょう。

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