ホテルラウンジの売上を伸ばす意外な一手とは?

2016年9月13日

サービス業

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2016/09/13

質問

あるホテルのラウンジの売上高が伸び悩んでいます。ラウンジの売上向上のために、あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

ラウンジのメニューを多様化し、販売単価を引き上げる。

パターン2

ラウンジをカフェ・レストランに改装する。

パターン3

ラウンジの空き時間を活用する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
サービス業・宿泊業イメージ01
サービス業・宿泊業イメージ02

あるシティーホテルのラウンジが活気を呈しています

首都圏に位置するあるシティーホテルのラウンジが活気を呈しています。このラウンジは、ホテル1階エントランスから正面に位置しています。ラウンジ自体の施設面積もかなり広くゆったりと、優雅なホテルライフを味わえる憩いの施設です。特にこのラウンジの利点は、明るく大きなガラス窓の向こう側に、広々とした緑豊かな庭園が借景として味わえることです。ラウンジのスタッフは、顧客に対して、丁寧で礼儀正しく、しかも優雅に対応しています。このフロアは、単にカフェ営業だけでなくさまざまなイベントに活用されています。教会式のウエディングを希望された場合には、ラウンジの中央に赤のバージンロードを敷き詰め、華やかさのなかにすがすがしさをも有する教会式場に姿を変えます。ホテルの総支配人は、この状況を見て満足そうな表情を浮かべています。

数年前 ~このラウンジは存続の危機すら検討される厳しい状況でした

数年前のホテル低迷期に、ラウンジのカフェ部門は、施設面積単位当たりの売上高もかんばしくなく、赤字体質でホテル経営の足を引っ張っている状況でした。当時、当ホテルの総支配人とラウンジ部門のチーフとの間に次のような会話が交わされていました。

総支配人 ラウンジの売上がかんばしくありませんね
チーフ 本当に厳しいです……。ラウンジをご利用いただくお客さまの数が目に見えて減っています。サービススタッフの人数をぎりぎりまで減らしていますが、人件費すら賄い切れない状況です。コーヒーの代金は、1杯1300円で、近隣のカフェに比べると、かなりの高価格ですが、固定費負担を考慮すればやむを得ません。他のホテルサービスからすれば、販売単価の低いドリンク代ですが、これ以上価格を引き上げることはできません
総支配人 お客さまのご意見もできるだけ収集して、素晴らしい庭園に面した当ホテルならではのラウンジをアピールしていけるといいですね
チーフ 当ホテルをオープンしてからだいぶ時間が経過していますが、設立当時と同じ方針でラウンジの営業を継続してきているのが実情です
総支配人 なにかわれわれのホテルの特徴を生かした発想の転換をしてみましょうかね

質問

あるホテルのラウンジの売上高が伸び悩んでいます。ラウンジの売上向上のために、あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

ラウンジのメニューを多様化し、販売単価を引き上げる。

パターン2

ラウンジをカフェ・レストランに改装する。

パターン3

ラウンジの空き時間を活用する。

売上高を向上させるために、ドリンクメニュー等の多様化を図ることも考えられます。ただし、メニューを増やせば食材やオペレーションが増え、追加支出も生じるので、慎重な検討が必要かもしれません。

ラウンジをカフェだけの営業ではなく、カフェ・レストランとして改装する方策も考えられます。ただし、改装のための投資や人件費増加なども生じるので、慎重な検討が必要かもしれません。

実は当ホテルの総支配人が選択したのはパターン3でした。このラウンジをテレビドラマの撮影場所として、積極的に誘致する方策を選びました。ただ、その際に、宿泊者やカフェ利用の顧客にご不便やご迷惑をかけないように配慮し、早朝・午前中に撮影許可時間を限定しました。朝食用のレストランは別に用意してあるので、ラウンジは午前11時よりの営業となっていました。そこで撮影に提供できる時間は、朝8時から午前11時までの3時間を原則として利用料を設定しました。それ以外の時間が必要な場合には、1時間ごとの利用料を決めました。

固定費のかたまりであるホテル業の施設活用には柔軟な発想が求められる

ホテル業は、いわゆる固定費中心型のコスト構造を特徴としており、顧客の有無にかかわらず建物や施設の巨額な減価償却費が発生しています。そのため、ホテルへの宿泊者数や飲食場所での利用者数によって業績が左右されやすいことも特徴です。バブル景気が崩壊し、デフレ不況が継続していた数年前までは、宿泊部門の稼働率が低迷し、宿泊料の割引や修学旅行生の誘致など苦しい時期が続いていました。企業主催やビジネス関係のパーティーや飲食も確実に減少していました。まさに、ホテル業界冬の時代といってもよい時期だったのです。

最近は、外国人ビジネス客や観光客の数が回復またはそれ以上に増加しており、ホテル宿泊部門の稼働率も急上昇し、宿泊単価も値上がりしていますが……。

 

総支配人は、ホテル業界は固定費のかたまりのコスト構造である点を再認識しました。そのため、ラウンジの稼働率もできるだけ上げていかなければなりませんが、ホテルのラウンジは、単にコーヒーなどを飲食するためだけでなく、例えば、シティーホテルならではの洗練されたサービスやおしゃれな雰囲気など非日常を味わえる空間としても期待されています。だからこそ、これまでどおりの営業を続けるのではなく、柔軟な新たな発想に立って、追加支出を抑えつつ、固定的な空間を活用することで活性化を図る道を探りました。

その時、総支配人は、関東地方のある鉄道会社が、路線の利用客が伸び悩んでいる状況を打開する一つの戦略として、テレビや映画の撮影場所としての提供を積極的にPRし、売上の増加につなげたとの話を耳にしていました。また、以前、あるテレビ会社から人気ドラマの撮影場所として、当ホテルのラウンジを利用させてもらえないかとの問い合わせもありました。しかし、今までそのような利用はありませんでしたし、それらのニーズに対応する準備も整っていなかったので、その段階では残念ながらお断りしたことを思い出しました。

ある日、支配人がテレビドラマを見ていると、飲食しながらドラマが重要な展開をするシーンがかなり多いことに気づきました。庶民的で下町風のコーヒー店、しゃれた雰囲気のすてきなカフェなど、ドラマの特色や彩りを盛り上げるために、さまざまなカフェが選ばれているのです。

実は、このカフェ選びは、テレビドラマ関係者の間でちょっとした悩みの種だということも、後日聞きました。そのつどスタジオにセットを組み、撮影を行うこともありますが、制作のための費用がばかにならず、また臨場感は現実のカフェにかなわないそうです。テレビ局担当者・プロデューサー・ドラマ制作会社等の関係者は、ドラマシーンに合った撮影場所の情報収集やロケハンに苦労していることが分かってきました。こうして総支配人は、当ホテルの企画会議で、ラウンジをテレビドラマ撮影用に提供することを提案し、実行したのでした。

 

当ホテルは、ドラマ撮影場所としての特徴や利点を積極的にPRしました。テレビドラマだけでなく、映画、コマーシャル撮影等の利用場所としての勧誘に力を尽くしました。そのおかげで、さまざまな関連業界での認知度が高まってきました。そういえば、テレビドラマを見ていて、「あっ、この場所はあのホテルのラウンジだ!」と気づき、なにか親しみを覚えることはありませんか? これまでそのラウンジを利用したことのない視聴者も、テレビに登場したラウンジを訪れて、ドラマの俳優やタレントと同じような体験をしてみたいというニーズもあるようです。この企画でテレビ局側とホテル側の双方に、Win-Winの関係が成立しました。

テレビドラマの撮影場所にラウンジを積極的に提供することにより、顧客も増加し、ラウンジ部門の施設面積単位当たりの売上高が上昇してきました。当ホテルの総支配人は、次のようにコメントしています。
「撮影場所への利用料分をコーヒー等のドリンクで稼ぎ出すには、一体ドリンクを何杯販売すればいいでしょうか」と。

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