生き残るカフェと音大生の意外な共通点とは?
2016年10月13日
質問
周辺の飲食店が増えたために客足が遠のき業績が悪化してしまった駅前の「ミロクカフェ」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?
パターン1
周辺の飲食店やパン屋などに負けないよう、より魅力的な食べ物メニューを開発する。
パターン2
来店者数を増やすため、営業時間を延ばす。
パターン3
得意分野で勝負するため、飲み物メニューに特化する。
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いつもお客さまでにぎわっている個人経営のカフェ
「ミロクカフェ」は、とある郊外の駅前にあるカフェです。このカフェのマスターは、コーヒー・紅茶好きが高じて10年前に会社を早期退職しこのカフェを始めました。駅周辺は近年開発が進み、チェーン店のカフェやファミレス、パン屋やお惣菜屋など多くの飲食関係のお店がならんでいます。そのなかでも「ミロクカフェ」の人気は高く、大勢のお客さまでいつもにぎわっており、経営も順調です。
店内の様子をみながらマスターはスタッフにうれしそうに言いました。
マスター | よかった。昨年はどうなることかと思っていたけど、ようやく持ち直したね! |
---|---|
スタッフ | そうですね。やはり決断してよかったですね |
どういうことなのでしょうか。去年のカフェの様子をのぞいてみましょう。
昨年 ~飲食店が増えるなかで立ち位置を見失ったカフェ
「ミロクカフェ」は10年前にオープンしました。当時、駅周辺は駅の利用者は多いもののいまだあまり開発されてはおらず、飲食店も数えるほどでした。そのような場所にカフェをオープンすることにしたマスターは、自分の好きなコーヒーや紅茶といった飲み物だけではなく軽食や焼き立てパンなども食べられるようなカフェが求められていると考えました。
マスターの読みはあたり、オープン以来、多くの客が飲食に訪れるようになり、「ミロクカフェ」は大繁盛しました。しかしここ最近、駅前の開発が進み飲食店が増えるにつれ、「ミロクカフェ」の経営状況は悪くなってきたのです。
ある日マスターは、オープン当時からのスタッフに切り出しました。
マスター | ここ数年、少しずつ経営状況が悪くなっているけど、いよいよまずい状況かもしれないな… |
---|---|
スタッフ | えっ。まずいとは、どういうことですか? |
マスター | 近所には最近、多くの飲食店ができて、そっちの方へお客さまが流れてしまい、このままの状況が続くと、店をたたまないといけなくなるかもしれないんだよね… |
スタッフ | そう言われると、確かに。例えば以前はうちでもよく焼き立てパンを食べてくれていたお客さまがパン専門店でパンを食べているのを見かけましたし、パスタなんかも、近くのイタリアンの方が充実していますからね |
マスター | …… |
質問
周辺の飲食店が増えたために客足が遠のき業績が悪化してしまった駅前の「ミロクカフェ」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
周辺の飲食店やパン屋などに負けないよう、より魅力的な食べ物メニューを開発する。
パターン2
来店者数を増やすため、営業時間を延ばす。
パターン3
得意分野で勝負するため、飲み物メニューに特化する。
確かに、周辺の飲食店やパン屋などに負けないようなより魅力的な食べ物メニューを開発することができれば、それを目当てに多くのお客さんが戻ってくることが考えられます。売上も伸びるでしょう。しかし、コーヒー・紅茶好きのマスターが、専門店を超えるようなメニューを開発するには相当な時間とコストがかかるでしょう。
確かに、より多くのお客さまに入っていただくために、営業時間を延ばすという方法もあるかもしれません。しかし、営業時間を延ばすとその分、自分とスタッフの労働時間が長くなり、場合によっては新たなスタッフを雇う必要も出てくるかもしれません。その分、人件費や光熱費も増加します。しかも、営業時間を延ばしたとしても、それに見合うだけのお客さまが入ってくれるかどうかはわかりません。そうすると、やみくもに営業時間を延ばすというのは、現実的ではないかもしれません。
「ミロクカフェ」のマスターが選択したのは、パターン3でした。オープン当時は飲食店も少なかったので、軽食や焼き立てパンなども食べられるカフェとして営業してきたのですが、食事メニューの方は必ずしも得意分野ではありませんでした。「ミロクカフェ」の得意分野は、なんと言ってもコーヒーや紅茶だったので、パン専門店など食べ物メニューが強い飲食店が出てくると見劣りするようになったのです……
ターニングポイントは得意分野に特化したことだった
ある日マスターが帰宅したら、娘が妻に愚痴っていました。娘は音大の声楽科に所属している音大生です。
娘 | あーあ。今度の定期演奏会の主役、A子になっちゃった。私は主人公のライバル役よ |
---|---|
妻 | まぁ!A子ちゃんって、あなたと音大付属高校時代に同級生だった子でしょ? |
娘 | そう!あの同じクラスだったA子よ |
妻 | あの子、高校時代から、歌もピアノも、あなたよりできなかったじゃない |
娘 | そうなの。高校時代は主専攻の歌も副専攻のピアノも私の方がずっとうまかったのよ |
妻 | どうしたのかしら |
娘 | あの子、大学に入ってからも、副専攻のピアノはさっぱりなの。私の方が、うんとうまいのよ。でも、歌はね…。あの子、大学に入ってから、ずいぶん伸びたのよ |
妻 | 誰か、いい先生についたのかしら |
娘 | それが、そうでもないみたいなの。A子の先生、私の先生と一緒だもん |
妻 | そうだったわね |
娘 | 今回の件を先生に相談したら、言われたの。A子はどうしても苦手なところがあったピアノは捨てて、得意な歌の方に時間をかけて練習してるよって |
妻 | あら、A子ちゃん、よく思い切ったわね |
娘 | そう、なかなかできないわ。私は歌もピアノもやりたいの |
妻 | そういえば、よくピアノもひいているわねぇ |
娘 | おかげで、A子と違って、ピアノは成績もいいんだけど、歌の方は、歌に集中しているA子に抜かれちゃったわ…… |
妻 | 若いんだから、まだまだこれからよ |
娘 | そうよね。これから、歌とピアノの練習時間の配分を見直してみるわ |
娘と妻の話を聞いていたマスターは、ハッと気が付きました。そうだ! 自分も娘と同じことをやっていたのかもしれない。何かで成功するためには、他の何かを捨て自分の得意分野に集中することが必要な場合があるということです。この場合、A子さんにとっては歌、マスターにとっては、コーヒーと紅茶だったのです。
ニーズがあるのではないかということで始めた食べ物メニューでしたが、元々、料理が得意だった訳でもなかったので、仕込みや調理などオペレーションにも手間がかかるなど、カフェを経営していく上で、効率的とは言えない面もありました。
効率の悪い食べ物メニューを切り捨てた結果、マスターは大好きなコーヒーや紅茶の魅力を高めるための時間と空間を手に入れました。飲み物の味は向上し、食事スペースはコーヒー豆や茶葉の販売スペースとなりました。またそれらの原価率が低いという相乗効果から「ミロクカフェ」の経営状態は劇的に改善したのです。
往々にして、環境の変化に適応しなくてはならない場合、自分の店のウリが何かを見極めそれに特化していくことが大切となります。「ミロクカフェ」は食事メニューを切り捨て得意分野であるコーヒーや紅茶に特化したことにより、遠のいていた客足が戻ってくるとともに、劇的に原価が低減され、利益率が改善されたのです。
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