「町の八百屋」はつぶれないのに、「町の工場」がつぶれかけた理由は?
2018年4月23日
質問
会社が成長する中、資金繰りが厳しくなりはじめたとき、あなたが経営者なら次のうちどの対策をしますか?
パターン1
買掛金の支払いを早めにする。
パターン2
棚卸資産が増え過ぎないようにする。
パターン3
売掛金の回収は相手の都合に合わせる。
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売上が拡大する中、資金繰りも順調な「町の工場」
「みろく工業」は、東京の大田区にある小さな町工場です。たくさんの小さな工場が立ち並ぶ中、ひっそりと営業しています。みろく工業は、規模はまだ小さいながらも、その独自の加工技術により、売上高は順調に伸びており、資金繰りも順調です。銀行からの借入も余裕をもって返済できています。
今でこそ、資金繰りが安定してきたみろく工業ですが、ほんの数年前はまさに「つぶれかかった」のです。
数年前 ~なぜ「町の八百屋」はつぶれないのに、「町の工場」はつぶれるんだ?
それは、みろく工業の社長が、新しい取引先から受注を獲得して、陽気に会社に戻ってきたときのことです。青ざめた顔で経理担当が社長に告げました。
経理担当 | 社長、大変です! 来週の支払いに必要な資金が足りません! |
---|---|
社長 | そんなはずはない。先月は過去最高の売上だったから資金も十分にあるはずだ |
経理担当 | 確かに先月は売上は多かったのですが…… |
社長 | 一体何が起きているんだ? こんなに順調に売上も利益も増えているのに、お金が足りないなんてことがあるのか? |
経理担当 | あ~、どうしよう……。今すぐ銀行に行きますから、社長も一緒にお願いします! |
その後、何とか銀行から融資を受けることができ、会社の倒産はまぬがれたのですが、社長は不思議でなりませんでした。 | |
社長の心の声 | <おかしいな~。「町の八百屋」はつぶれないって聞いたことがあるのに、なぜ同じような「町の工場」であるうちはつぶれかけたんだろう……。何か対策をしないと、また倒産のピンチが来るかもしれないぞ> |
質問
会社が成長する中、資金繰りが厳しくなりはじめたとき、あなたが経営者なら次のうちどの対策をしますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
買掛金の支払いを早めにする。
パターン2
棚卸資産が増え過ぎないようにする。
パターン3
売掛金の回収は相手の都合に合わせる。
みろく工業の資金繰りが厳しくなったのは、過去最高の売上の入金がある前に、仕入代金の支払いが来てしまったからかもしれません。ということは、買掛金の支払期間を短くしたら、資金繰りは一層悪化してしまいます。支払期間を短くする代わりに仕入価格を下げるなど有利な条件を得られるのであれば良いかもしれませんが、資金繰りの観点からはむしろ買掛金の支払いは余裕があるほうが有利です。
実は、社長が行ったことはパターン2でした。売上が伸びて会社が成長する中、棚卸資産が増え過ぎないようにすると、なぜ資金繰りが楽になるのでしょうか……
みろく工業の資金繰りが厳しくなったのは、過去最高の売上の入金がある前に、仕入代金の支払いが早く来てしまったからかもしれません。ということは、売掛金の回収期間を相手の都合に合わせて長くしたら、資金繰りは一層悪化してしまいます。回収期間を長くする代わりに販売価格を上げるなど有利な条件を得られるのであれば良いかもしれませんが、資金繰りの観点からはむしろ売掛金の回収は早くするべきです。
資金繰りを改善するには、資金の回収サイクルに注目しなければいけなかった!
何とか銀行から融資が受けられることになり、安堵しながら帰宅した社長は、妻にその話をしました。妻は、結婚前はある企業の経理部で働いていたため、結婚後はみろく工業の経理を手伝ってくれていました。しかしその後、会社の売上が順調に伸び出した頃から会社に姿を見せなくなっていたのです。
社長 | いや~、危なかったよ。会社の資金繰りが苦しくって、どうなることかと思ったよ。町の八百屋はつぶれないって聞いたことがあるけど、町の工場がつぶれかかるって、どういうことだ? |
---|---|
妻 | あなた、何言ってるのよ! 町の八百屋がつぶれないのは、“町”だからつぶれないんじゃなくて、“八百屋”だからつぶれないのよ |
社長 | えっ、そうなのか? 何だ、町にあるような小さな会社はつぶれないって意味だと思ってたよ |
妻 | 違うわよ! 八百屋さんっていうのはね、野菜を売ったときお客さんが現金をその場で払ってくれるでしょ。だから、資金の回収サイクルが早くて、資金繰りが楽なのよ |
社長 | へ~、君はさすが経理部で働いていただけあって詳しいね。で、資金の回収サイクルって何だい? |
妻 | 事業を行うとき、まず材料や部品を買って製品を作るわよね。そして、その製品を売ると売掛金になるでしょ。その売掛金が回収されて資金になって、そこから買掛金の支払いが行われるでしょ。この資金の流れのことを言うのよ |
社長 | なるほど……、分かったような、分からないような…… |
妻 | 資金の回収サイクルを早くして、資金繰りを楽にするためには、売掛金と棚卸資産を減らして、買掛金を増やせばいいわけ。分かる? |
社長 | …… |
妻 | まったく……、会社の売上が伸びているって聞いていたから安心していたけど、やっぱり私がいないとダメみたいね。じゃあ、もっと詳しく説明するわよ! |
社長 | …… |
それから、社長は夜通し妻のレクチャーを受けることになりました。おかげで社長は資金の回収サイクルの意味が分かりました。 翌朝、社長はすぐに幹部を集め、売掛金の回収期間が長い取引先や、買掛金の支払期間が特に短い取引先を洗い出し、各担当者に個別に交渉し改善するよう指示を出しました。また在庫についても、売上が増えたからと言って安易に仕入量を増やすことをやめ、適切な在庫水準について検討をはじめました。こうした取り組みの結果、資金の回収サイクルがうまく回っていくようになっていったのでした。 |
「資金の回収サイクル」
会社が事業を行う際、「資金 → 棚卸資産 → 売掛金 → 買掛金 → 資金」という具合に資金が回ります。これを資金の回収サイクルと言います。在庫を圧縮して棚卸資産を減らしたり、売掛金の回収を早めて売掛金を減らしたり、また買掛金の支払期間が長くなったりすれば、回収サイクルが短くなり、会社の資金繰りは楽になります。
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