給料アップで人材定着!? 資金に余裕がない飲食店オーナーの人材流出防止策とは?
2016年7月13日
※本記事は2024年2月19日にタイトル及び内容の一部を更新しました。
旧タイトル「スタッフの定着率を高めたいとんかつ屋オーナーが気付いた方法とは?」
質問
なかなか給料アップができずスタッフが定着しないことが悩みの「とんかつみろく」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?
パターン1
ない袖は振れないのだから、なんとか社員を説得する。
パターン2
本当に現在の状況では給料アップの資金をねん出できないのか調査する。
パターン3
銀行借り入れを行うなどして、給料アップのための資金を作る。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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やる気のある人材が定着している店
とある県に店内はいつもスタッフの活気で満ちあふれ、この活気を体感することで来店客も元気にしてしまうことで有名な「とんかつみろく」というとんかつチェーン店があります。多くの飲食店が人材の定着に頭を悩ませる中、とんかつみろくでは、やる気のあるスタッフが育つだけでなく、長く働いている者が多いのです。
今では、ライバル店から羨望(せんぼう)のまなざしを向けられるとんかつチェーンになりましたが、実は数年前までは真逆の状態だったのです。ちょっとその頃の様子をのぞいてみましょう。
数年前 ~給料アップできず人材流出の危機
ある日の営業時間終了後、スタッフルームでは勝田社長が通りかかったのに気付かず、こんな会話が展開されています。
Aさん | はー、中小企業は定期昇給なんて望めないって聞いてたけど、まさか一生この給料のままなんてことないだろうなぁ…… |
---|---|
Bさん | おい、知ってるか? あっちのイタリアンの店の給料。うわさで聞いたんだけど、働きぶりによってはウチよりだいぶもらってるやつもいるみたいだぜ |
Aさん | 本当かよ。ウチは頑張って働いても給料上がりそうもないよなぁ……。なんかモチベーション下がってきた |
Bさん | だろう? あのイタリアンの店、人も募集してるみたいだし、ちょっと話聞いてみようかなぁ |
そんな二人のやり取りを偶然聞いた社長は焦りました。
「ウチには給料アップするだけの余裕はない。でも、このままだとせっかく育ててきた社員がライバル店に流れてしまう。一体どうすればいいんだ……」
いい案が思いつかないまま月日は過ぎ、ライバル店の給料のうわさが広がった「とんかつみろく」のスタッフのモチベーションは見る見る下がり、ついには接客や調理などオペレーションにも大きな影響が出るほどになっていきました。
質問
なかなか給料アップができずスタッフが定着しないことが悩みの「とんかつみろく」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
ない袖は振れないのだから、なんとか社員を説得する。
パターン2
本当に現在の状況では給料アップの資金をねん出できないのか調査する。
パターン3
銀行借り入れを行うなどして、給料アップのための資金を作る。
確かに、社員のモチベーションや、会社に貢献しようとする想いは、給料だけで上がるわけではありませんよね。例えば、「今は給料が少なくても社長の夢を一緒にかなえたい!」そう思ってもらえるなら、無理して給料アップしなくても社員は付いて来てくれるかもしれません。お金とは別の社員の心をつなぎ留める何かが自社にはあるか考えてみるのも一つの手です。
実は、とんかつみろくの社長が選択したのはパターン2でした。資金に余裕がない中で店舗を運営してきた社長にとって、当初は、給料アップなんて支出が増えることはできるだけ避けたいというのが正直な気持ちでしたが……。
借り入れをしてまで自分たちの給料アップを考えてくれるなんて、社員はきっと社長のおとこ気に感じ入ってくれることでしょう。資金不足で苦しいときこそ手を差し伸べてくれる、そんな関係を金融機関と築けているなら、借り入れを考えることも一つの手です。ただ当たり前ですが、借りた金は返さないといけません。また、この給料アップによって、少なくとも給料アップ分と借入利息分を上回る効果が出なければ、さらに資金状況が悪化しかねませんので、注意する必要があります。
人材定着のターニングポイントは費用の考え方を変えたことだった
ある日、社長が自宅に帰ると娘が妻にお小遣いアップの交渉をしている真っ最中でした。
娘 | ねー、お願いお母さん! あと5000円だけでいいから |
---|---|
妻 | 何言ってるの! 前にも増やしてあげたばかりじゃない。そんなにほいほいお小遣いをアップしてあげられるほど、ウチは裕福じゃありません! |
娘 | だったら、今2週間に1回、業者さんにお家を掃除してもらってるけど、私が毎週掃除するよ! そうすれば業者さんは1カ月に1回くらいで済むから、その分浮くでしょう? |
妻 | また最初だけうまいこと言って。そんなの続いた試しがないでしょう。それに何でそんなにお金が必要なのよ? |
娘 | どうしても自分でお金をためて買いたいものがあるの! |
妻 | 一体何を買おうとしてるのよ? |
娘 | …… |
妻 | まったくもう。とにかく、あなたにとって毎週掃除をしてもいいと思えるくらい、やる気が高まることなのね。分かったわ。やってみましょう |
娘 | 本当にいいの? お母さんありがとう! |
そのやり取りを聞いているとき、ふいに社長は気付いたのです。
「そうか。娘はウチの支出を増やすことなく自分の小遣いアップを実現した。それは、掃除という自分にとって嫌なことを毎週するほどのすごいモチベーションになるんだな。会社も同じじゃないか。何かもっと削減できる支出を見つけて、それを給料アップなど社員のモチベーションにつながる支出の方に回すことができれば……」
これを実現するために社長が取り組んだのが“費用の色分け”と称する取り組みでした。
「費用にも、できるだけ減らすべき費用と、目的によっては増えてもいい費用とがある。だから、それがきちんと区別して見えるようにしよう」
その結果、「とんかつみろく」では、支出を減らすべき費用を“コスト”、支出が増えてもいい費用を“投資費用”と名付け、それぞれの費用に対する見方を見直していくことになります。
今の活気あふれる「とんかつみろく」があるのも、この取り組みが重要な転換点の一つだったのです。
その後、勝田社長は、接客や調理のスキルアップのために一流と言われているお店へ客として食べに行ったり、社員が研修を受けたりといった社員教育のための支出などについては、給料アップと同様、社員のモチベーションアップのための“投資費用”として、材料ロスや余剰在庫などは削減すべき“コスト”として色分けするようになっていきました。
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