配送頻度に悩む食品卸! 大手業者に顧客を奪われないためにとった選択とは?

2020年2月3日

卸売業

  • 卸売業
2020/02/03

質問

中華料理店向けに業務用の中華食材や調味料等を卸している「中華食品ミロク」ですが、最近、得意先からは、配送の頻度を増やしてほしいとの要望が出てきています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

従来どおり、無料で週1回の配送とする。

パターン2

希望する得意先には配送頻度を増やすが、取引高に応じて配送料を一部有料とする。

パターン3

得意先の希望により毎営業日でも配送する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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得意先から厚い信頼を得ている会社

「中華食品ミロク」は、中華料理店向けに業務用の中華食材や調味料、酒類等を卸しており、食材等の質の高さなど得意先から厚い信頼を得ており、順調に業績を伸ばしています。売上高の過半は得意先への配送による販売が占めています。

しかし1年前、配送の頻度をめぐって問題が起きていました。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

1年前 ~大手業者の出現

中華食品ミロクでは、配送サービスを所定の曜日に週1回行うようにしていました。得意先の信用を得て、次第に大口の配送による販売量が売上高の過半を占めるようになりました。
 
ところが、1年ほど前に変化が現れ始めました。

得意先 この間、フカヒレとか、ホタテとか、急ぎで手に入れたい食材があったんだけど、ミロクさんだと翌週の配送になるって言われたから、よそに頼んじゃったんだよ

中華食品ミロクの得意先にも大手の食品卸売業者が回り、毎営業日配送を喧伝したのです。大手の業者は取り扱う食材は多いものの、中華食材に関しては中華食品ミロクのように取りそろえてはいないのですが、得意先の中には大手業者との取引に切り替えるところも出てきたのです。

他の得意先の中には、大手業者と同様に配送の頻度を増やしてほしいと要望するところが出てきていました。こうした状況を前に、社長はどうしたものかと悩んでいました。

質問

中華料理店向けに業務用の中華食材や調味料等を卸している「中華食品ミロク」ですが、最近、得意先からは、配送の頻度を増やしてほしいとの要望が出てきています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

従来どおり、無料で週1回の配送とする。

パターン2

希望する得意先には配送頻度を増やすが、取引高に応じて配送料を一部有料とする。

パターン3

得意先の希望により毎営業日でも配送する。

確かに、従来どおり週1回の配送にとどめれば、配送コストは維持できるでしょう。しかし、得意先から寄せられた要望にも応えていないので、客離れが心配されます。
 

社長が選択したのはパターン2でした。得意先の要望への対応と採算を踏まえたものだったのですが、どういうことでしょうか……。
 

得意先の希望により毎営業日でも配送することとすれば、大手業者に対して配送サービスにおいて劣ることはありません。しかし、かなりのコスト増加が予想されます。
 

ターニングポイントは社長が配送のコストを把握したことだった

そんなある日のこと、社長は音楽のCDを買おうと通信販売のWebサイトを開きました。社長が長年ファンであるミュージシャンが、数年ぶりに新アルバムを発売するというので、注文をしたのでした。発注完了後に関連商品を見ていると、あることに気づきました。

社長 おっ、このミュージシャン、新アルバム発売に合わせてデビュー以来の出来事を書いた自叙伝を出版するんじゃないか! この自叙伝も注文しておこう

次の週末は、自叙伝を読みながら、新譜のアルバムを聴こうと楽しみにしていました。さらに数日後、新聞広告を見ていて気づきました。

社長 あっ、あのミュージシャン、自叙伝に合わせて、デビュー30周年を記念した写真集も出すんじゃないか!

社長は迷わず通販で購入しました。
 
そして、社長は、「自社の配送問題」に頭を悩ませながらも、息抜きのために注文した、趣味の品々が届くのを心待ちにしていたのでした。

ピンポーン。宅配便がやって来ました。

社長の心の声 <おっ、これはCDだな>

次の日。ピンポーン。また宅配便がやって来ました。

社長の心の声 <これは自叙伝か>

その次の日。ピンポーン。またまた宅配便がやって来ました。

社長の心の声 <この箱の大きさは写真集だろうな>

このとき社長は思いました。

社長の心の声 <なるほど。CDと自叙伝と写真集をバラバラに注文したのを個別に配送していたらコストがかかるよな。うちの店も、これと同じように、お客さんからの小ロットの発注にその都度対応して配送していたら、とてもじゃないがコストがかかって仕方がない>

さらに……

社長の心の声 <毎営業日配送だと、コストも数倍になるな。うちなら配送エリアはあの大手業者ほど広くないから……>

社長は、翌日から数日かけて、週1回配送や週2回以上配送の場合のコスト、毎営業日配送の場合のコストを比較計算してみました。

社長の心の声 <確かに、ガソリン代など配送コストはそれなりに増えてしまう。でも、うちが取り扱っている中華食材は、大手業者が取り扱っていないものも多い。だったら、その強みで大手業者と勝負できるから、大手に追随して毎営業日配送までは必要ない。場合によっては、配送頻度増によるコスト増は得意先さんに負担していただいたっていいんじゃないか?>

結局、中華食品ミロクでは配送頻度を増やすことにしたのですが、前月の取引高に応じて、取引高の少ない得意先からは配送料をもらうことにしました。
 
配送頻度増に対応したことで、大手業者に切り替える得意先はほとんどなくなり、売上減を抑えることができました。むしろ、配送頻度増を歓迎し新たな得意先が増えました。
 
配送頻度は増えましたが、配送の際には常備品を車に乗せておき、常備品が切れていないか声掛けして補充したり、珍しい食材の入荷予定の情報などを知らせたりしたことで、得意先のニーズを引き出すことができ、売上増にもつながったのでした。

ワンポイント解説

「配送コスト」

商品や製品を顧客のもとに届ける上で、配送業者を使えば業者への配送料の支払いが生じますし、自社で行えば配送担当の人件費、車輛の減価償却費やリース料、保険料、ガソリン代などがかかります。配送コストが増えれば、商品・製品販売の採算悪化につながることもありますので、配送コストを踏まえて、業者を使うか否か、配送頻度、配送範囲などを検討する必要があります。

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