自分の意見が絶対!? そんな社長が“裸の王様”から抜け出せた、ある方法とは?
2018年1月13日
質問
新業態の店舗をはじめるにあたり、そのレイアウトを会議で決定し、それを店舗開発部長が業者に発注したところ、なぜか不具合だらけの設計で大幅な工事のやり直しが必要になってしまいました。あなたが経営者なら、どのように対策をしますか?
パターン1
会議のやり方を変える。
パターン2
店舗開発部長を変える。
パターン3
業者を変える。
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新店舗が大成功している会社
「牛丼みろく」は、ある地方で牛丼専門店として大成功しています。最近では、さらに焼肉定食、焼き魚定食などの和定食を主要メニューとする新業態の店舗も立ち上げ、いずれの店舗もお客さんがひっきりなしに入っています。
今でこそ、新業態の店舗が成功している牛丼みろくですが、最初に定食屋という新業態の店舗をはじめたときは、とんでもない損失を出してしまっていたのでした。
1年前 ~こんな狭い調理場じゃ定食は作れない! なぜこんなことに……
牛丼みろくの社長が牛丼以外の定食屋を新たにはじめることを決心したとき、経営会議でその話をしても、誰も反対する人はいませんでした。社長は一度決めたら自分の意見を曲げようとせず、反対意見を言おうとしてもすぐ反論されてしまうからです。
数週間後、社長は自ら定食屋のレイアウトを作り、それを経営会議で説明しました。牛丼店と違って、顧客層が幅広くなることから4人掛けテーブルを多くし、また子供が入りやすいように家庭的な雰囲気にこだわっていました。
社長 | というわけで、こんなレイアウトを考えてみたんだが、どうだ? |
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幹部の皆 | …… |
社長 | じゃあ……、店舗開発部長はどう思う? |
店舗開発部長 | えっ、私ですか? 私はこれで良いと思います |
社長 | おー、そうか。他の皆も同じ意見だな? |
それから数週間がたち、お店のオープンを前に社員向けの試食会が行われました。 ……が、いつまで待っても料理が出てきません。不安に思った社長が調理場をのぞきに行くと、そこは大混乱でした。狭い調理場に大きなお盆が所狭しと置かれており、大勢の料理人がひしめいています。社長は気付きました。 |
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社長 | <しまった。牛丼店は狭い料理場で済んでいたが、定食の場合はお盆を置くための広いスペースが必要だったんだ……。もう一度設計のやり直しだ……> |
質問
新業態の店舗をはじめるにあたり、そのレイアウトを会議で決定し、それを店舗開発部長が業者に発注したところ、なぜか不具合だらけの設計で大幅な工事のやり直しが必要になってしまいました。あなたが経営者なら、どのように対策をしますか?
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パターン1
会議のやり方を変える。
パターン2
店舗開発部長を変える。
パターン3
業者を変える。
実は社長が行ったことはパターン1でした。社長が、会議のやり方を変えることにしたきっかけは何だったのでしょうか……
店舗開発部長がレイアウト上の問題に気付くべきだったかもしれません。いえ、実は店舗開発部長は問題に気付いていたのでした。しかし、それを口にできない理由があったのです。その根本的な原因を考える必要がありそうです。
実際の設計にあたった業者は社長の考えたレイアウトのとおりに工事をしただけです。業者に非があったわけではなさそうです。もっと根本的な原因に目を向ける必要がありそうです。
企画会社で働く娘に学んだ、アイデアを生み出す方法とは?
数日後のこと。牛丼みろくの社長が自宅に帰ると、妻、新社会人の娘、大学生の息子の3人が何やら話をしていました。企画会社に新卒入社した娘の夏休みに、家族旅行に行こうというわけです。まだ意見はまとまっていないようです。
社長 | 何だ、例の旅行の行き先か? それなら俺の好きな伊豆に決まりだ |
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娘 | えー |
社長 | 何だ |
娘 | お父さんは、なぜいつもそうやって一人で決めようとするの? |
妻 | お父さんはそういう人なのよ。きっと会社でもそうなんでしょ? |
社長 | そんなことないぞ! 会議で皆の意見も確認してるしな |
息子 | いや~、どうかなぁ。案外お父さんは“裸の王様”なのかもしれないよ |
自分に限って“裸の王様”なんてことはあり得ないと、社長が反論しようとしたとき、企画会社で働く娘が提案しました。 | |
娘 | ねぇ、皆でブレーンストーミングやってみない? うちの会社ではよくやるのよ。皆でとにかくたくさんアイデアを出し合うの |
息子 | 何だ、それだけ? 大層な名前の割に普通だね |
娘 | そうよ。ただ、とっても大事なルールがあるの。それは人の出したアイデアを批判してはいけないってこと |
すると、早速息子がアイデアを出しました。
息子 | じゃあ、ハワイで皆でサーフィンなんてどう? |
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社長 | ダメだ、俺がこの年でサーフィン何てできるわけがないだろう! |
娘 | あっ、ルール違反よ。そうやって人のアイデアを批判したらダメなのよ |
社長 | ううっ、なるほど。そういうことか |
それから、何と1時間もの間、4人でアイデアを出し合った結果、実に多くの新しい旅行案が出ました。誰かが出したアイデアをもとに、どんどん新しいアイデアが出てくるのです。結局、どの案にするかは決まりませんでしたが、考えもしなかった楽しそうなアイデアに、皆がワクワクしてきて、旅行が楽しみになってきました。
そのとき、社長は、ふと思いました。
社長 | <なるほど。常にアイデアを出さなければならない人たちは、ブレーンストーミングという会議のやり方を使っているわけか。もし、新しい店舗のレイアウトもブレーンストーミングで、気になる点や改善策を会議であげてもらっていれば……> |
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翌週の経営会議でのことです。社長は幹部に向かって言いました。
社長 | 俺の作ったレイアウトを再設計するにあたって、皆に意見を出してもらいたい。これはブレーンストーミングだ。気になる点や改善すべき点があれば、何でもいいから言ってくれ。ただし、人の意見に批判は禁止だ。俺も皆の意見を決して批判しない |
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幹部たちは言いにくそうにしていましたが、やがて経理部長が思い切って口火を切りました。
経理部長 | カウンター席の間隔ですが……、牛丼と違って定食ですから、調理場と同じようにもうちょっと幅をもたせた方が良いのでは……ないでしょうか…… |
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皆、社長の反応を見守っています。社長はここが肝心と、一声言いました。
社長 | なるほど。確かにそれも一理ある。事務局はホワイトボードに今の案を書いてくれ。他にはどうだ? |
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すると、本当に社長は怒らないと分かった幹部たちから、せきを切ったようにさまざまなアイデアが出てきました。
営業部長 | 家族連れもターゲットですから、ベビーカーが置けるテーブルも作ってはどうでしょうか |
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店舗開発部長 | それなら、赤ちゃんでも食べられるメニューも用意してはどうでしょうか |
こうして、店舗のレイアウトにとどまらず、メニューや価格、接客方法などさまざまな新しいアイデアが出てきたのでした。
社長はそれを聞きながら思いました。
社長 | <ひとりよがりに設計を考え、あとから不具合が見つかってコストアップになるぐらいなら、最初の企画段階で時間をかけてアイデアを出し合っていた方が、結果的にコストは抑えられたはずなんだな……> |
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「ブレーンストーミング」
会議などでアイデアを出すための技法。互いの出したアイデアを否定せず、自由にアイデアを出し合うことで、新たなアイデアが誘発されることを一つの狙いとします。ただし、ブレーンストーミングは多くのアイデアや新しいアイデアを出すことが目的であり、その中からどの案を採用するべきかを決めるものではないので、どの案を採用するかについては別の会議などで検討することになるでしょう。
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