過剰在庫や品切れ! 悩む社長が選んだ適正な在庫管理への第一歩とは?

2020年3月3日

卸売業

  • 卸売業
2020/03/03

質問

「ミロク自転車アクセサリー」は、過剰な在庫がある一方で、品切れで急な注文に対応できずに受注を逃したこともありました。あなたが経営者なら、次のうちどの方法で在庫量を調整しますか?

パターン1

物流倉庫を借り増して、在庫量は調整しない。

パターン2

指標を使って適正在庫量をつかみ、在庫量を調整する。

パターン3

緊急な受注は受けないこととし、在庫量をできる限り少なくするようにする。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
イメージ01
イメージ02

過剰在庫や品切れの悩みから解放された!

現在の「ミロク自転車アクセサリー」は、在庫管理がうまくいくようになり、売上を減らすことなく、利益面でもキャッシュ・フローの面でも、改善が図られました。陳腐化した商品在庫を解消することができ、また販売機会を逃すことも少なくなりました。

しかし、2年前は過剰在庫や品切れの問題に悩んでいたのです。

2年前 ~手狭になる倉庫、なのに品切れ?!

ミロク自転車アクセサリーは、創業者社長が引退して、その息子が二代目社長として事業を引き継ぐことになりました。取り扱っているのは、自転車のライトやドリンクホルダー、盗難防止グッズ等の様々なアクセサリーで、メーカーから仕入れた商品をサイクルショップなどに卸しています。取り扱う商品の種類が多種・多様で、長期にわたって保管し続けているものもありました。売上が伸びているわけではないにもかかわらず、近頃は年を追うごとに在庫が増えてきていました。その一方で、在庫の不足により、急な注文に応えられないといったことも起きていました。倉庫も手狭になってきていることから、このままでは新たに倉庫スペースを確保しなければならなくなりそうです。何より、このまま在庫が増えていくことが社内でも懸念されるようになってきていました。

質問

「ミロク自転車アクセサリー」は、過剰な在庫がある一方で、品切れで急な注文に対応できずに受注を逃したこともありました。あなたが経営者なら、次のうちどの方法で在庫量を調整しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

物流倉庫を借り増して、在庫量は調整しない。

パターン2

指標を使って適正在庫量をつかみ、在庫量を調整する。

パターン3

緊急な受注は受けないこととし、在庫量をできる限り少なくするようにする。

物流倉庫を借り増せば、品切れにならないよう十分な在庫を保管しておくことができ、売上の機会を逃さなくなるかもしれません。しかし、いたずらに保管スペースを広げると倉庫の賃借料が増えるばかりでなく、過剰在庫がさらに増えてしまうかもしれません。

ミロク自転車アクセサリーの社長がとったのは、指標を使って適正在庫量をつかみ、在庫量を調整することでした。それでは、一体どんな指標を使うことにしたのでしょうか?
 

緊急な発注を受けないことにより、在庫量を大幅に減らせば、確かに倉庫の賃借料は減少します。しかし、売上も減少することが予想されるため、利益を上げるという観点からは問題が残ります。
 

在庫のキモは“回転期間とリードタイム”にあり

二代目社長は、会社の事業を引き継ぐことが決まってから、まずは会社の経営管理に関する講習会に参加するようにしていました。その中には会計に関する講習会もあり、そこでは経営分析に関するいろいろな説明がありました。ミロク自転車アクセサリーでは在庫を多く抱えていることもあり、在庫管理に関連した経営分析の説明、特に「在庫のキモは“回転”にあり」との一言が印象に残りました。在庫の回転期間という指標を使うことで、在庫が回転しているのかどうかが見えると言うのです。

その日帰宅した社長は、早速自社の商品在庫の回転期間(注)を計算してみることにしました。ちょうどそこに、大学の商学部に通っている息子がやって来ました。

息子 電卓をたたいて何をしているの?
社長 会社の在庫管理の問題をしっかりと把握しておこうと思って、財務比率を計算しているんだよ
息子 ふ~ん。あぁ、回転期間か
社長 知ってるのか?
息子 まぁね。ん……、だいぶざっくりした計算だね~
社長 何が?
息子 確か、父さんの会社って、結構たくさんの種類の商品を扱っているんじゃなかったっけ? 種類によって、在庫の回転期間は、大きく異なる場合だってあるから、種類ごとにそれらを計算したほうがいいと思うよ
社長 なるほど。そうすれば、種類ごとの適正な在庫量も分かるということだな。今はデータがないから、明日会社に行ってから計算してみるとするか
息子 そういえば、適正在庫に関して、この前の授業で、企業が要するリードタイムと顧客が要求する納期とを比較して、在庫の量を決めるべきだという話を聞いたよ
社長 リードタイムって何だよ
息子 簡単に言うと、商品を仕入先に注文してからお客さんに渡すまでに必要な期間だね。もしお客さんが発注してから2週間以内に納品してほしいと要求してきた場合に、その商品のリードタイムが10日だとしたら、在庫はゼロでも問題はないよね
社長 確かにそうだな。これまで、リードタイムってやつを考えずに在庫を持ってたな

そのとき社長は思ったのです。

社長の心の声 <いい話を聞いた。息子の大学の授業料を、ここで回収できるとは思わなかった>

適正な在庫管理に向けての第一歩

翌日、二代目社長は早速、スタッフの力も借りて、主力商品について、回転期間を計算してみました。いずれの商品も毎日のように注文が入る商品です。
社長 回転期間って商品ごとに随分と差があるもんなんだな。商品Aは148日、商品Bは47日、商品Cは10日……。商品Aは随分長いし、商品Cは随分短いじゃないか!
そこで疑問が湧いたのです。
社長 商品Aって、メーカーさんに注文すればすぐに納品してくれてるはずだよな……。逆に商品Cはメーカーから取り寄せるのに1カ月位かかるはずだ……
商品Aは注文すればすぐに納品してもらえる、つまりリードタイムが0日に近いのですから、148日分もの在庫を抱えているのはどう見ても異常です。一方商品Cは、取り寄せに1カ月かかる、つまりリードタイムが30日位ということですから、その間にすぐ納品してほしいと注文が来ても、すぐに欠品になってしまい、注文を受けることができません。
社長 商品Aは在庫が多過ぎで、商品Cは在庫が足りないってことか……。確かに商品Cは品切れで受注できないことが時々あったかもしれないな……
こうして、リードタイムを考慮しながら、回転期間が長い商品・短い商品、つまり売上の割に在庫が多過ぎる商品・少な過ぎる商品を洗い出していったのです。その結果、それまでいかにムダに在庫を持ち過ぎていたのか、逆に必要な在庫を持っていなかったのかが良く分かりました。

その後は、何となく感覚で在庫を管理していた従来の手法を改めました。定期的に回転期間をウォッチし、リードタイムを考慮しながら、多過ぎる商品は仕入を絞り、少な過ぎる商品は早めに仕入れるようにするなど、在庫調整をしていきました。

こうして、ムダな在庫が減り、借りる倉庫のスペースは以前より少なくて済むようになり、倉庫の代金も減少することとなりました。また、品切れで受注を逃すことも減っていったのでした。

(注)商品在庫の回転期間(回転日数)は以下のように計算できます。
           商品在庫の回転期間=商品残高÷1日当たり売上高(または売上原価)
 
ワンポイント解説

「リードタイム」

仕入先に商品を注文してから(メーカーであれば製品の製造に関する作業に着手したときから)、顧客に商品(製品)を引き渡すまでの期間のことを言います。在庫を保有すると、品質低下や陳腐化が生じるリスクも高まるため、リードタイムを考慮に入れて、在庫保有量を調整することが考えられます。
関連リンク回転期間について知りたい方はコチラの記事もご覧ください。
売上アップでも資金繰りが厳しい状況から抜け出す方法とは?(経営センスチェック2017年1月23日号)
資金繰りに苦労する父親とテスト結果に泣く息子、その意外な共通点とは?(経営センスチェック2019年5月13日号)

おすすめ情報

セミナー情報

経理実務の「3大困りごと」 仕訳入力・経費精算・給与計算の業務効率化の考え方

税経おすすめ経理

【LIVE配信】10月24日(木)13:30~15:30
【アーカイブ配信】10月29日(火)~11月29日(金)

「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」から362件の経理担当者のリアルな声が聞けました!

その中でも実務において経理担当者が困っている「仕訳入力」「経費精算」「給与計算」の「3大困りごと」を改善するためのセミナーを開催します。

本セミナーでは、数々の経理業務の代行や業務改善コンサルティングを行っている講師が、それぞれの業務から見た改善ポイントを考察します!

【講師】MJS税経システム研究所 客員講師
外波 達也 氏

経営センスチェックSelection

経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!

SelectionVol.12

制作

Banner
×

X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら