経営会議前は残業続き! この状況から脱却するため経理部が取り組んだこととは?
2018年10月23日
質問
月次決算書の分析や支出内訳の回答準備などの作業で、経営会議の前は残業続きになっている「MJS部品工業」の経理部。あなたが経理部長なら今後に向けてどのような対応をしますか?
パターン1
会計ソフトの科目設定を工夫する。
パターン2
事前準備する項目を最小限に抑え、それ以外は聞かれた都度調べる。
パターン3
表計算ソフトを使って別途管理する。
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経営会議の準備をテキパキとこなす経理マン
工業用部品のメーカーである「MJS部品工業」の経理部では、来週開催される経営会議に向けて月次決算書の各項目の増減理由を説明できるよう準備しています。
経理部長 | 販売費・一般管理費の前年同期比較の増減理由は分かっているかな? |
---|---|
経理スタッフ | はい、間もなくまとまります。後ほどご確認お願いします |
経理部長 | あぁ、分かった。宜しくな |
今でこそ経営会議の準備にも余裕が見られる経理部ですが、1年前の状況は全く違っていました。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。
1年前 ~経営会議の前後、経理部では残業が当たり前
MJS部品工業では会計ソフトを使用して経理処理を行っており、経営会議ではこの会計ソフトで作成した月次の決算書を用いて業績の報告・検討を行っています。
経営会議では決算書の増減項目について、その理由説明を求められることから、経理部では、経営会議に備えて各メンバーが分担して、総勘定元帳や会計伝票を当たって各勘定科目について増減理由を調べるようにしています。
これまで、MJS部品工業の経理部では、費用科目の内訳については、会計伝票の「摘要」欄にある程度の内容は記載していました。しかし、その記載の仕方はまちまちでしたし、何も記載がない伝票も相当数ありました。このような状況のため、勘定科目の内訳を調べる際、まずは「摘要」欄を頼りにしますが、それだけでは調べきれず、会計伝票、さらには請求書・領収書といった証憑類まで調べることも度々ありました。
そんなある日のこと、MJS部品工業の経理部では、来週開催される経営会議に向けて準備している最中です。
経理部長 | 前回の経営会議で旅費交通費の内訳を質問されたから、今回は事前に内訳項目別に集計しておいてくれるかな |
---|---|
経理スタッフ | はい、分かりました。経営会議までに間に合うよう対応します! |
経理部メンバーが分担して準備をしていますが、やるべきことが山積みです。今日も残業となりそうです。 | |
社長 | 支払手数料だが、前年同期と比べて当期はT社への業務委託をなくしたから半減するはずじゃないのか? 何で全然減ってないんだ? |
経理部長 | もっ、申し訳ありません。只今、支払手数料の内訳資料がありませんので、別途調べてご報告いたします |
社長 | すぐに頼むぞ |
質問
月次決算書の分析や支出内訳の回答準備などの作業で、経営会議の前は残業続きになっている「MJS部品工業」の経理部。あなたが経理部長なら今後に向けてどのような対応をしますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
会計ソフトの科目設定を工夫する。
パターン2
事前準備する項目を最小限に抑え、それ以外は聞かれた都度調べる。
パターン3
表計算ソフトを使って別途管理する。
MJS部品工業の経理部長が選択したのは会計ソフトの科目設定を工夫することでした。それでは、実際にどのような工夫をしたのか、また、その結果どのような効果が現れたのかと言うと……
事前準備する項目を最小限に抑え、それ以外は聞かれてから調べることにすれば、事前準備の時間を減らすことができます。しかし、MJS部品工業では、月次決算書の諸項目の増減分析など、基本的な項目にも手間取っている状況ですので、見直しが必要でしょう。何より、この対応では経営者の信頼を得られそうもありません。
該当する取引件数が少ないといった状況であれば、表計算ソフトで別途管理してもそれ程手間はかからず、また、質問されてもすぐに回答できるでしょう。ただし、取引件数が多くなると、表計算ソフトで別途管理することは煩雑となったり、会計データとの不整合が生じやすくなったりと、諸々の問題が発生するかもしれません。
埋もれたままの機能があった!
MJS部品工業の経理部長が経営会議への対応のことで悩んでいたある日のこと、中堅企業で長年経理部長を務めている友人と会う機会がありました。
経理部長 | お前は経理一筋だよな |
---|---|
友人 | そうだな。かれこれ20年になるか |
経理部長 | そうか、そんなになるのか……。そうだ、ちょうどいい。ちょっとお前に相談したいんだ |
友人 | えっ、どんなことだ? |
そして、経理部長は経営会議への対応のことで悩んでいることを話しました。 | |
友人 | お前の会社では会計ソフトを使ってるんだろ? |
経理部長 | あぁ、そうだよ |
友人 | それなら、補助科目ってのがあるんじゃないか? |
経理部長 | どうだったかな。会計ソフトの勘定科目は初期設定のままいじってないはずだからな…… |
友人によると、どうやら勘定科目の内訳科目を管理するための補助科目の機能が活用できそうだと言うのです。
翌日、経理部長は経理部メンバーを集めて、会計ソフトの補助科目の機能を活用できないのか検討してみることにしました。例えば、支払手数料勘定であれば支払先区分別、給料手当であれば内容別などの切り口で内訳科目を設定することができそうです。
勘定科目の内訳を確認する際には、勘定科目からその内訳科目、さらに計上時の会計伝票へとブレイクダウンして分析を進めることもできるようです。例えば、支払手数料が著しく増加しているため、補助科目ごとに比較することで業務委託先への手数料の増加が大きいことがつかめ、さらにブレイクダウンして「10月に計上したT社に対する業務委託手数料の影響が大きい」ことがつかめるといった具合です。
その後も検討を進め、最終的に補助科目を活用することに決めました。
会計ソフトの補助科目の機能を使って、予め勘定科目の内訳項目を補助科目として設定しておくようにした結果、いちいち会計伝票の「摘要」欄に詳細を記載しなくても、伝票起票時に補助科目を選択すれば済むようになり、伝票起票がしやすくなりました。
補助科目を設定していれば、補助科目ごとに金額も自動で集計できるので、内訳が一目瞭然になるとともに、前年同期比較や月次推移比較も簡単にできるようになりました。
内訳の把握や比較分析がしやすくなったことで、万が一仕訳の際に勘定科目のミスが発生した場合でも、ミスが見つかりやすくなるといった効果もありました。
それだけではありません。従来、法人税の確定申告の時期には、税金計算の観点から別途必要な金額を集計する作業が必要でした。旅費交通費に含まれる海外渡航費を集計するとか、課税対象となる交際費を集計するなどの作業です。これらについても補助科目を設定して区分できるようにしたことで税金計算のための集計作業も効率化することができたのです。
費用の内訳が見えないとムダな支出が発生していてもなかなかそのことに気付きませんでした。しかし今では、内訳がつかみやすくなったことで、ムダな支出にも目が届くようになり、経費削減にもつながっています。
いくつかの切り口で補助科目を設定するなど、新たな視点からの分析もでき、受け身になりがちだった経理部が、先取りして情報提供できる経理部へと変わっていったのでした。
「補助科目」(内訳科目)
補助科目とは、特定の勘定科目の内訳となる科目のことをいいます。決算書に計上される勘定科目について、さらにその内訳(取引の種類別や取引先別など)を把握・分析したい場合に、予め補助科目を設定して仕訳をすることで、内訳ごとに集計が簡単にできます。
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